僕も行く!
「わかった、わかった。行ってよい」
「本当ですか!!!?」
「父上!」
嬉しくて思わず声をあげたけれど、隣でルーフェスが非難めいた声をあげている。
「ミスト室長からも、信頼できる人材をつけるから許してやってくれと、内々に頼まれているのでな、しかたあるまい」
なんと……! ミスト室長ったらいつの間に。
どうして市井官のみなさんは、こう仕事が早いのかしら。ありがたい援軍に、笑みがこぼれる。
「気を付けていくのだぞ。お前を危険に晒したくないのは、私とてルーフェスと同じだ。あまり心配させてくれるなよ」
「お父様……ありがとう、ございます」
嬉しくてちょっぴり涙ぐんでしまったのに、お母様がこっそり「あなた、素敵」とお父様にささやいているのが見えて、涙もひっこんでしまった。
仲が良さそうで何よりです。
「僕も行く!」
和やかな空気の中、いきなりの宣言が響き渡った。
「まぁまぁ、何を言っているの、ルーフェスったら」
お母様の驚いた声に、ルーフェスは動じる様子もない。お父様をまっすぐにみて、こう言った。
「以前そうやって姉さんを旅に出して、案の定賊に襲われたのを、父上も忘れたわけではないでしょう。無事で帰って来たからいいものの……!」
あまりの剣幕に、口をはさむことさえできない。ルーフェスは本気で怒っていた。
「姉さん、僕も行くから。反論はなしだよ」
勢いに押されて、うんうんと頷く。目でお父様に助けを求めたら、再び両手をあげて「仕方あるまい」と呟かれてしまった。
「せっかくだ、視察も兼ねて行ってくるがいい」
お父様の返答に、ルーフェスは力強くガッツポーズした。
「まぁまぁ、ルーフェスったら。本当にお姉さま思いな子ねぇ」
お母様……そんな剣幕じゃ、なかったと思うのですけれど。
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そんなアレコレがあってしばらく。私とルーフェスはコーティ様と一緒に馬車に揺られていた。
「コーティ様が一緒に行ってくださるんですね。草案などのお仕事はよいのですか?」
「問題ありません。私は貴女の教育係ですから、同行するのは当然です。安心してください、私も昨年までは数々の調査をこなしてきましたので、ノウハウはすべて網羅していますよ」
「そう……ですよね、心強いです。よろしくお願いします」
にこやかに言ってから、挨拶を促すためにちょいちょいとさりげなくルーフェスをつついたけれど、なせかルーフェスは憮然とした表情でコーティ様を睨んでいる。
ちょっとルーフェスったら、自分からついてきたのに、失礼な態度はお願いだからやめてね?




