何言ってんの、姉さん!
「クーレイ? ええ、知っていますよ。クーレイがどうかしました?」
どうしてもどうしても気になってたまらなくなった私は、その週、コーティ様にさりげなくクーレイの話を切り出してみた。
「いえ、先日町で民生官のオーズさんとお話しした時に、クーレイから入ってくる鉱石がものすごく高い、逆にこちらの宝石もかなり流れているようだってお話があったので」
「ああ、なるほど」
「ちなみに、クーレイの治安ってどうなんでしょう」
「……」
なぜか私をモノクル越しに凝視したコーティ様は、次いで「フフッ」と笑う。
「貴方は本当に可愛いかたですね」
にっこり微笑まれたけれど、意味がわからない。
というか、コーティ様もこんなこというのかと少し驚いてしまう。恥ずかしいんですけれど……。
「そうですねぇ、クーレイが気になりますか?」
「は、はい!」
「行ってみます? そういう状況ならどちらにしろ調査員を派遣することになりますし、貴女にもそろそろ、調査員の業務を見学させる時期かと思っていましたし」
「い、行きます!」
「ふふ、即答ですね」
「あ、いえ、あの、できることなら行きたいです……! ただ、とても遠いと聞いたので、家族や学園の了承がないと」
「学園は……近々夏季の休みがありますから、その時期を使えば問題ないでしょうし。ああ、ご家族の了解だけはとっておいてくださいね」
「はい、もちろんです!」
ついにくすくすと笑い出したコーティ様は、「貴女には、ポーカーフェイスもそのうち学んでもらわないといけないですねぇ」と言いながら、隣のミスト室長の部屋に入っていく。
わずかな間があって、ミスト室長の部屋の扉から、ぴょこんと顔が飛び出した。
「ミスト室長」
「いいよ、いいよ。行っておいで。オーズ氏たちとの連携がうまくいきそうなのも君のおかげだからねぇ。少し羽を伸ばして来るといいよ」
にっこり笑うミスト室長の後ろから、「まったく、もう少し分かりやすく言ってあげてくださいよ」と苦言を呈しながらコーティ様が顔を出す。
「さきほどのクーレイ行きの件、このとおりミスト室長の了解も得ましたのでご安心を」
そうコーティ様が微笑んでくれて、ようやく私も何のことか理解した。なんとも仕事が早い人だ。
それから邸に帰ってからが大変だった。
「はぁ!? 何言ってんの、姉さん!」
開口一番、ルーフェスに一喝されてしまった。お父様さえ口を開く間もない電光石火。
「まぁ、素敵。クーレイって今、レオくんが行っているところでしょう? あんな距離を越えて会いに行くだなんてロマンねぇ、素敵だわ」
応援しちゃう、というお母様に、仕事だから! とルーフェスが吠える。




