ごめんなさい! 食べたいですぅ!
それにしても店主さんって、本当にアイディアが豊富なかたなのね。
中に入っているケーキも、さまざまなフルーツがあしらわれて、目にも鮮やか。
「フルーツの種類が豊富で、彩が華やかですね」
「すごく綺麗、すごくカワイイ。美味しそう~」
私とエマさんの賞賛を受けて、店主さんは嬉しそうに顔をほころばせる。
「いやあこのところ色んな食材がそこそこ手に入れやすい価格で出回るようになってな、ついつい作るのが面白くて。どれも自信作だ、楽しんで食ってくれ」
上機嫌で去っていく店主さんの後姿を思わずぼんやりと眺めてしまう。
そういえば、女将さんもこの頃珍しい食材が安くなってきたって嬉しそうだった。それって、もしかしてレオさんが交易路を開発しているからなのかしら。
「どうかしました?」
カーラさんの声にハッとする。
「いえ……このところ食材が豊富になったというお話を他でも聞いたもので、その、交易路の開発が進んでいるのかな……と思って」
言いながら視線を戻せば、目の前ではカーラさんとエマさんが、ニヤニヤ顔で私を見ていた。
「えっ……私、なにかおかしいこと、言いました?」
「いいえ~、可愛いなぁと思っただけで」
「だよねぇ、なんだかんだ言ってね」
二人して笑いあっては私をからかうように見てくるから、段々と恥ずかしくなってきた。
「もう……! 先にいただきますよ?」
二人の視線から逃げるように、チョコレートのドームに開いた穴にフォークを差し込むと「あーーーーっ」とエマさんが叫び声をあげる。
「ごめんなさい、ごめんなさい! 食べたいですぅ! その緑色のマーブルのがいいですぅ」
こらえきれずに笑ってしまった。
取り分け用の小皿にとってあげるとキラキラの瞳で「ありがとうございますぅ~!」と感謝される。エマさんは本当にカフェ・ド・ラッツェのケーキに目がないのね。
「んもー、エマったら食い意地張ってるんだから」
「カーラさんはどれがいい?」
「えっ、私が先に選んでいいの? じゃあ……うわぁ、どれがいいかな、そのピンクの果実がたくさんデコレートされたのが食べたいかも」
カーラさんと自分にも取り分けて絶妙な美味しさに舌鼓をうつ。
私がチョイスしたのは、モンブランのような見た目のプチケーキ。とても甘みが強かったけれど、一口サイズだからかしつこさがなくてとても美味しい。
「じゃあ、金づちはわたしが担当しますねー!」
カフェとは思えない物騒なものを構えて張り切るエマさんがおかしくて、私達は最後のひとかけらまで楽しんで食べ切ったのだった。




