なんですかコレ~~~!!!!
「うっわー、なんですかコレ!? なんですかコレ~~~!!!!」
エマさんの雄叫びが店内に響き渡る。
「エ、エマ、恥ずかしいから! クリスティアーヌ様にご迷惑だから!」
必死で止めるカーラさんの声も、きっとエマさんの耳には入っていまい。エマさんの目は今、テーブルの真ん中に鎮座する新作ケーキに釘付けだ。
「無理もないわ。私もこんなケーキ、初めてですもの」
お皿の上にはドーム状とでもいえばいいか、バスケットボールをパクっと半分に切ったくらいの大きなケーキ? があるけれど、まるで鏡のように滑らかな表面。
こんなにつやつやになるものかしら。
「ホワイトチョコレートかしら。それとも飴?」
ムースだったりクリームだったりでここまでつやつやになるとも思えなくて、素材が何かがとっても気になる。
私の顔が映るくらいですもの。このパティシエさんの技術ってとてもすごい。
「さあ、なんだろうね。それは割ってのお楽しみ」
「割って?」
店主のお兄さんが、いたずら気にウインクする。きっと自信作なのだろう。でもケーキを割るだなんて表現、あまり聞いたことがないけれど。
「さあ、エマちゃんだっけ? 一番反応よさそうな君に割ってもらおうかな」
店主さんが、なんとちっちゃな金づちをエマさんに手渡した。
にっこにこな笑顔で、金づちを振り下ろすゼスチャーをして見せているけれど、エマさんは金づちとケーキを見比べてあわあわしている。
「軽~く、ポコンと叩けばいいから!」
「ええ、本当に叩くんですかぁ」
「一気に!」
私もカーラさんも、いったいどうなるのかが楽しみで、興味津々で見守った。
エマさんは、私と視線を交わしてから、コクンとひとつ唾をのんでポコンとケーキを叩く。
「あれっ」
「ああ、力がちょっと弱かったみたいだね。もう一回!」
鏡面みたいにツヤツヤした表面に、僅かなへこみができたくらいで、まだ中身は見えない。エマさんは、今度は「えいっ」と小さく気合を入れて、金づちを振り下ろした。
「わあ……!」
「可愛い!」
思わず口から「可愛い!」が零れ落ちる。
だって、割れたところから可愛らしい色とりどりのプチケーキがたくさん見えている。
一口サイズでとっても可愛らしい!
「このドームももちろん食べられるからね」
ケーキを覆っていたまあるいドーム状のものの欠片を指先でつまんで口に運べば、幸せな甘さが口の中に広がる。
「あ、やっぱり、ホワイトチョコレート」
「食べやすいサイズに割って食べてね。薄いから軽くたたけば割れるから」
「すごい! こんなの初めて見た! どうやって作るんですか?」
「秘密ー」
カーラさんが突っ込んで聞いてみたものの、企業秘密なのか教えては貰えなかった。




