そんなシステムが……!
なんと申し訳ないことに昨日、改稿前の分を間違ってアップしちゃいました……(泣)
これの前の分も合わせて読んでくださいませ……。
お詫びに本日、この後24時前後にもう一話アップいたします(*_*)
「君の親父さんのことだからさ、親戚筋から用意するつもりだったかもしれないけど、俺はクリスちゃんの隣を譲る気はないからね」
「レオさん……!」
嬉しい。すごく嬉しい!
「あっ……でも、このまえ、婚約はまだ早いって……」
「そう、でもまだ望みはある。さっき『それに準ずるもの』って言っただろう?」
「はい、それって」
「正式に婚約はしていなくても、両家の家長が正式に認めてくれれば、パートナーとして参加できるんだ。俺はそれに賭ける」
「そんなシステムが……!」
「こっちは問題ないとしても、君の親父さんのOKを貰うには、やっぱり何か手土産をもっていくべきだと思うからさ。もちろん、仕事で」
レオさんが、そんなことを考えてくれていたなんて。
「俺、頑張るからさ。クリスちゃんも他のヤツと紅月祭に出ようなんて考えないで、信じて待っててくれよ」
「ありがとうございます、レオ様……! 私、待ってますから……!」
昨年の、レオさんと踊った紅月祭が思い出されて、胸が熱くなる。今年も、レオさんと一緒にあの煌めくような時間を共有できるのならば、こんなに嬉しいことはない。
嬉しくて涙が込み上げる。それを堪えていたら鼻がつーんと熱くなって、少し恥ずかしくなった私は、心を落ち着けるために馬車の外に視線を送る。
馬車の窓から見える景色は、いつの間にか西区になっていた。
「もう西区か」
私の視線が馬車の車窓に向いたせいか、レオさんかそんな言葉が漏れた。
このところオーズさんにお世話になっているおかげですっかり見慣れた、西区のちょっと無骨な雰囲気。
レオさんとぽつり、ぽつりと会話を交わしながら景色を眺めていたけれど、オーズさんの武器屋を見た瞬間、知らずピクリと身体が跳ねた。
そうだった、オーズさんに『根回し』しないといけないんだった。
「クリスちゃん、どうかした?」
さすがレオさん。私の僅かな表情の変化や、ちょっとだけピクリと身体が跳ねたのを見逃さなかったらしい。人のことを本当につぶさに見ているかただわ。
「いえ、そういえばミスト室長やコーティ様から、オーズさんに根回しを頼まれていたな、と思い出したもので、ちょっと体が反応してしまいました」
「馬車をとめようか?」
「いえ、今でなくとも大丈夫なことなので」
「そう、それならいいけど、根回しって、なんの根回し? 差し支えなければ聞かせてくれるかな」
考えてみたけれど、お話したところで誰かが困るものでもない。
私はレオさんに、今後市井官と民生官が協力して案件調査を進めていくことができないかを模索していて、そのためにオーズさんに根回しするのだと説明した。