実は私も、嫉妬してしまいました
勇気をだして、私はおそるおそる切り出してみた。
「……あの、実は私もちょっと、嫉妬してしまいました」
「え、なんで?」
「今日、お城のホールから声をかけてくださった時、綺麗な女性と話していらしたでしょう?」
「ああ、あれ?」
すぐに思い当たったようで、レオさんは「いとこだよ。気にすることないのに」と破顔した。
一瞬安心したけれど、冷静に考えると本当に安心していいのかはわからない。
いとこで結婚する例なんてごまんとあるのだもの。ただ、それはなんとなく言えなかった。
私の微妙な気持ちには気づいていないらしいレオさんは、おどけたように言葉を続ける。
「まいったよ、彼女もハフスフルールの女傑の一人でね、どっちかっていうと説教されてた」
「お説教? レオさんずっと遠征続きですし、交易路の開発なんて難しいお仕事をとても精力的にやっているのに……お説教される要素が思い当たらないのですけれど」
「新人としてはよくやっていると思うわ。でもハフスフルール侯爵家を背負うのならば、この程度で満足していてはダメよ」
目を閉じて、ツンと顎を上げてそう言い放つレオさんは、声色まで高めに変えている。その様子が面白くて、笑えてしまった。
なんですか、モノマネですか。
残念ながら、似ているかどうかは全然判断できないのですけれど。
「酷くない? 俺、結構すごい成果あげてると思うのにさ」
レオさんの口ぶりをみるに、私の嫉妬は杞憂だったみたいで少し安心する。
ちなみに袖を引っ張っていたのは、レオさんが私に声を掛けたから「あれ、クリスティアーヌ嬢でしょう? 市井官を目指していると聞いたけれど、本当に王城に来ていたのね」と、まるで書庫で出会った狐目の男性のようなことを言っていたらしい。
……恋敵じゃなくて、本当に良かった。あんなに綺麗なかた、勝てる気がしないもの。
「まあ、言われなくても頑張るつもりだけどね。紅月祭までには、クリスちゃんの父上になんとしてでも認めて貰わないと」
「紅月祭? なぜいきなり紅月祭なんですか?」
「そのポカンとした顔……今年の紅月祭、クリスちゃんはいったい誰と出るつもりだったのかな?」
そんなこと、考えてもいなかった……!
でも、でも、婚約者がいる皆様は卒業生でもパートナーとして参加していらしたと思うのだけれど。
「レオ様、今年もパートナーになってくださいますか?」
「なりたいから、頑張ってるんだよ。さすがに学園外からの参加は、学生の親族か婚約者、もしくはそれに準ずるもの、って規定があるんだ」
知らなかった……!
生徒会のメンバーで、かつ最高学年にもなるというのに、考えた事も無かった。