表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

203/282

やっと会えた

「先程のような小物に怯えていたのがウソのように、そのうち手のひらで転がせるようになるはずです。楽しみにしていてくださいね」



それは、素直に楽しみにして良いものかどうか……。



「利用しようと近づいて来たものは、利用してやればよいのです。誠実な人には誠実に対応すれば良心の呵責もないでしょう? 状況や人物の見極めも、市井官には大切なスキルですよ」


「はい……!」



とても難しいことのように思えるけれど、それでも、コーティ様が言うように、見極めのスキルが重要だというのは理解できる。


上申された案件を調査して、差し戻すか対応するかを見極めるのも、市井官の大切な仕事の一部なのだから。



「このスキルは日常的な観察力がモノをいいます。いつも心がけておくことです」


「はい、頑張ります!」



 私の返事に、コーティ様は黒くない笑みを浮かべた。



「……その素直さも、貴女の大きな武器ですね。頑張って、私もミスト室長も期待しています」



叱られてしまったけれど、その上で、期待しているとも言って貰えた。


私……私、頑張ろう。




************




「クリスティアーヌ嬢!」


「レオ様!?」



大量の書物たちを所定の位置に返し終えて、やっと書庫から出てきたら、なんとレオさんが扉の外で待ってくれていて、驚いてしまった。



「良かった、やっと会えた……!」



ほっとしたように笑って、レオさんが近づいて来る。



「遠征から戻っていたんですね」


「ついさっきね。グレースに聞いたら、今日は市井官の仕事の見習いとして城に居るっていうから」



レオさん、もしかして私を探して会いに来てくれたの……?


 

嬉しい。


ものすごく嬉しいけれど、でも今は仕事中だもの。


無理を言ってお仕事を見せていただいているのに、ここで時間をとるわけにもいかない。



「おかえりなさい、レオ様。あの、私、あと二時間くらいかかるのです。出来たらでいいのですけれど、そのあとでお話……いいでしょうか?」



せっかく来てくださったし、会うのだって久しぶりだから、やっぱりちゃんとお話ししたい。


でも、旅から帰って来たばかりのレオさんに無理をさせるのが申し訳なかった。



「そっか……今は、市井官の仕事を見学してるんだもんね」



レオさんがちらりとコーティ様を見て会釈すると、コーティ様もにこりと微笑んで会釈する。


レオさんはコーティ様のことを知っているような口ぶりだったけれど、顔見知りではなかったのか、特に言葉は交わさないまま、私へと視線を戻した。



「俺もいったん報告に戻らないといけないから、仕事が終わったら落ち合おう。いつもの御者を王城の前に待たせておくよ」


「はい」


「では、お仕事中失礼いたしました」



コーティ様に折り目正しく一礼して、レオ様は颯爽と去っていった。

 

せっかく来てくれたのに、なんだか申し訳ないけれど、こればかりは仕方がない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【作者の先日完結作品】こっちもオススメ♪

ここをポチッと押してね(^-^)

『魔法学校の無敵の首席騎士様は、ちょっとコミュ障、大型わんこ系でした』

先日完結しました。首席騎士様が強いのにカワイイとの感想を多数いただいております(笑)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ