場違い感がすごいんですけど
「武器屋に入るのに、そんなに勢い込まなくてもいいと思うがな」
「つい……場違い感が凄そうだったから」
「違いねえ。ま、中にゃ想像通りむさい男がたむろしてるし……店主が見た目ほとんど熊だからな。覚悟して入った方がいいかもな」
むしろ余計に緊張する情報を追加してから、容赦なくマークさんは店の扉を開ける。重そうな木の扉がギギッと軋むような音を立て、店の中が露わになる。
「どうだ?」
「……思ったより、テールズと似た雰囲気でした」
マークさんにはまたも吹き出されてしまったけれど、本当にあんまり雰囲気が変わらない。よく考えればテールズも冒険者のお客さんが多いんだもの、当たり前か。
そして、もうひとつ。店主さんだと思われるオジサマの雰囲気が、なんだかとても女将さんに似ているの。
たしかに店主さんは見た目がごっつくって大きくって、冒険者の人達よりもはるかに強そう。
太い腕もぶ厚い胸板も、本当に熊みたい。顎髭もすごくってどこからもみあげでどこから髪で、どこから髭かわからないくらい、もっふもふしてる。見た目は正直怖い。
……でも。
冒険者さん達にかける言葉は乱暴なのになんだかあったかくって、豪快に笑って背中をドーンと叩いてるところなんか、女将さんみたいでデジャヴを感じる。
「テールズと似てる、か。そうかもな!」
やっと笑いが収まったらしいマークさんは、「お前は意外と頼もしいな」と、なぜか褒めてくれた。
「なんだマーク、カノジョでも見せびらかしに来たかァ?」
店主さんのからかうような声が、店内に響き渡る。どうやらこの店では珍しい、町娘丸出しの私は、予想通り目立ってしまったらしい。
店中の視線が私に集まるのを感じて、勝手に顔が赤くなってしまう。ヒュウ♪ と口笛が聞こえたり、マークさんをはやす声が聞こえてきていたたまれないんですが。
「ばーか、からかうんじゃねーよ。オーズ、アンタに用があってわざわざ訪ねて来た娘なんだぜ?」
どうしたらいいか分からなくてただただ困っていた私と違って、マークさんはサラリと躱す。
マークさんのひとことで、今度は店主のオーズさんがはやされることになった。
「で、アンタみたいな若い姉ちゃんがワシに用たァ何ごとだ?」
お客様たちに散々はやされた結果、お店だと人目がうるさいと辟易したらしいオーズさんが、お店の奥の居住エリアに招いてくださったおかげで、私とマークさんは、ソファにゆっくりと腰かけてお話をできることになった。
「私、クリスティアーヌと申します。突然で申し訳ないのですが、民生官のかたを探していまして」
「ああ、この地区の民生官はワシだが。なんだ、困りごとでもあったか」
「……!」
なんともあっさり民生官のかたが見つかった。あの商人のオジサマに感謝だわ。
「困りごとは特にないんですが、お願いがあってまいりました」
「なんだ、言ってみろ」