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市井官のお仕事③

「指示を出すのは元々ミスト室長のお仕事ですからね」



怖い笑顔で返してから容赦なく扉を閉めたコーティ様は、やれやれ、と呟きつつため息をつく。


どうやら地位的にはミスト室長がここのトップのようだけれど、コーティ様が実権を握っているのは確かみたい。


お若いのに凄いなぁ、と少し感心してしまった。


すぐに柔和な表情に切り替えて私を見ると、コーティ様は早速説明の続きに入る。



「こんな風に調査に時間がかかる案件を数名の市井官が調査する一方で、ミスト室長は差し戻しの案件を処理し、その間に主に私が行うべきと判断した案件の計画と予算の草案を作成します」


「草案を、お一人で?」


「もちろん案件によっては手分けすることもありますが、基本的に調査はすでに済んでいるものですからね。それに、一番難しいのは予算や草案の作成よりも、国の承認を得て実行に移すことです」


「そうなのですか?」



きちんとした計画書が出来ていれば、実行に移すことはそう難しいことではない気がして、私は思わず聞き返した。



「もちろん。予算を通すのも難しいですし、関係各所の合意を取り付けるのは容易なことではありません。貴族しかいない王城の中で平民しか恩恵を受けないような案件を通すのはそれはもう難しいものですよ」



コーティ様の渋い顔に、私はお父様の「王城は魔窟」という言葉をふと思い出した。


お父様でさえそう評するのだから、本当に難航するものなのだろう。



「それに、王城内で案件が通っても、市井の調整がこれまた厄介なのです。利権が相反するもの同士を納得させ、後から問題が出ないように調整するのは至難の業でして」



そしてコーティ様は声を潜めてこう言った。



「ここだけの話、今のところこのすべての説得と調整、をミスト室長以上にうまくやれる人を私は知りません。ああ見えて交渉ごとでは海千山千の猛者なのです。いつもはあんな感じの方ですが、悔しいことに尊敬せざるを得ないのですよ」



初めて見るコーティ様の苦虫を噛み潰したような顔に、笑いを堪えるのが大変だった。


それからはコーティ様について、計画の立て方や予算編成の仕方などを教わり、ひと通りのデスクワークを体験させて貰う。


簡単な試算や書類の作成などを実際にやらせて貰えたのが、とても新鮮で嬉しい。


当たり前のことだけれど、生徒会で扱う書類よりも、圧倒的に数も多いし、記載すべき事項も複雑だ。


なによりも書類の下方に並ぶ署名欄の多さに圧倒されて、これからこの書類たちがどれだけの関門を抜けて実行に移されるのかを思うと、頑張れ、と思わず書類に声をかけたくなってしまう。


一日が終わる頃にはなんだか肩が張ったように感じるくらい、書類仕事だけでも大変だった。



「計画書を作るって大変なことなのですね」



思わず素直な感想を伝えると、コーティ様は少しだけ眉を下げた。

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