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心配なのね

「あらぁ、クリスティアーヌ様ったら浮かない顔してますのねぇ、大丈夫? 疲れてません?」


「そんなに覇気のない顔じゃ、次の試験、私たちには勝てないわよ!」



資料室でぼんやりしていたら、マルティナ様とアデライド様が声をかけてくれた。心配されるような顔をしていたのかしら、気をつけないと。



「レオ様のこと考えてたんでしょう」



ふふっとマルティナ様がいたずら気に笑う。


恥ずかしいけれど、図星なものだから反論もできない。情けないなあ。



「なんだ、そういうことね。心配して損したわ」


「もう、アデライドったら。レオ様が遠征中なんですもの、心配なのは当たり前よぉ」


「あら心配したって仕方ないじゃない。なんの助けにもならないわ」



 細い銀縁メガネをクイっと上げて、アデライド様が言い放つ。それは本当にその通りではあるのだけれど、だからといって心配せずにはいられないんですもの。



「いやあね、アデライドったら。理屈じゃないのよ、分かってるんでしょう?」



くすくす笑いながら、アデライド様の顔を覗き込むマルティナ様。


ツンと顎を上げていたアデライド様は、バツが悪そうにちょっとだけ頬を赤らめた。



「分かってるわよ。でも、不毛じゃないの。どれだけ心配してたって、それでレオ様に何か益があるわけじゃないもの。クリスティアーヌ様が胸を痛めるだけ損だわ」


「心配なのね」


「……っ、私は、心配するくらいならレオ様が帰って来た時のために、何かできることをやっておいた方がよほど役に立つと思っているだけよ」



照れた表情のまま、それだけ言い残すとアデライド様は耐え兼ねたように踵を返して、さっさと行ってしまった。


マルティナ様はその後ろ姿を苦笑しつつ見送ると、私にひとつウインクする。



「気にしないでくださいませねぇ。本当はアデライド、ずっとクリスティアーヌ様が元気がないって心配していたんですのよぉ。でも、どうも素直になれないみたいで」


「ありがとうございます。でも、アデライド様の言う通りですわ。確かに心配しているだけではダメだって、私気づかされました」


「あらぁ、アデライドの照れ隠しも時には役に立ちますのね」



マルティナ様はおかしそうに笑うけど、本当に背筋がシャンと伸びた思いだった。



「ええ、とても。落ち込んでばかりいないで、私、レオ様の益になるようなことを考えてみます」


「あらあら、頑張りすぎてお体を壊したりしないでくださいませねぇ」



やんわりとくぎを刺すマルティナ様には、完全に脱帽だった。

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