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レオナルド様への贈り物ですかな

「私達、平民なんですけど……お店に入って良かったですか?」



ちょっと不安そうなカーラさんに、ハワードさんはにこやかに「もちろんです」と答えてくれる。



「もともとこの通りは、平民でも貴族でも気兼ねなく通えるような通りだったのですよ。平民の方ももちろん歓迎しております」



そう言ってハワードさんが見せてくださったのは、平民でも手の届く価格の愛らしいアクセサリーから、お父様が身に着けていらっしゃるような豪奢な一点ものの宝石までが上品に飾られている、充実した品ぞろえだった。


なんでもハワードさん達のような昔ながらの宝飾店は、この通りにめっきり平民が通わなくなってしまったことをとても寂しく思っているのですって。


いつでも平民の方に対応できるように幅広い品をそろえてはいるんだけれど、今では平民のお客様は月に数人いるかどうか。



「うーん、ここって貴族のひとじゃないと来ちゃいけないのかって思ってました」


「お店も高級そうだし、なんかイカツイ男の人が立ってて怖いものね」


二人の素直な感想に、ハワードさんは苦笑する。



「新興の店はどうやら町の人にそう思わせたいようですね、敷居が高いと思うような店構えにしているようですが……私達のような古参の店は、昔を懐かしんでおりますよ」



少し遠い目をしたハワードさんの表情が悲しそうで、私も少し胸が痛む。町の雰囲気というのは、個人の力ではいかんともし難い部分もあるものね。


市井官や民生官になったら、これも一つの問題として頭を悩ませるのかもしれない。



「このところはなかなか平民の皆さんとお会いする機会も少なくて、寂しいものです。まだ学生でしょうから買わなくても結構ですので、カーラさんやエマさんもまた遊びに来てください。美味しいお茶をふるまいますよ」


「やったぁ」


「本当ですかー、わぁ、嬉しい!」



優しいハワードさんのおかげでカーラさんやエマさんもはじけるような笑顔があふれる。それを満足そうに笑って見ていたハワードさんは、おもむろに私の方へ視線を向けた。



「ところで、本日はどのようなご用向きですかな?」



ハッとする。いよいよ、本題だわ。



「あの、実は男性に、その……卒業祝いに、白のクラヴァットを贈るのですが、それに合わせられるアクセサリーも一緒に贈りたくて」


「ああ、なるほど。もしやレオナルド様への贈り物ですかな」



言い当てられて、私は絶句してしまった。どうしてわかったんだろう、混乱する。顔が熱い、きっと今、私、真っ赤になっているに違いない。



「おやおや、これは申し訳ない。先だって奥方様がおいでになった折に、それは楽し気に話していかれたもので、レオナルド様への贈り物かと思いましてね」



お、お母様……! どうしてそんな話を他所でしちゃうのか……!

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