まずい、さらに誤解されている。
「優しいのは分かってますって! レオ様にやきもち妬くんじゃないかって話です」
「ルーフェス様、クリスティアーヌ様のこと大好きですもんねぇ。とっても可愛いです」
まずい、さらに誤解されている。しかもルーフェスの沽券にかかわるレベルだわ。
「とんでもない、むしろ私、どちらかというと苦手とされている感じなのよ。本当にルーフェスと話すようになったのもここ二年ほどの話で」
「うんうん」
「あの子は優しいから、それでも気を遣って優しくしてくれていて」
「そうですよねぇ、分かりますよ、クリスティアーヌ様。ルーフェス様はツンデレですよね!」
ツンデレ……。エマさんに全力の笑顔でそう断言されて、なんだかもう誤解を解くのは諦めたほうが良さそうだと直感した。言えば言うほど深みにはまりそうな気しかしない。
カーラさんも腕組みのまま「うんうん」なんて、同意しかしないし。
ごめんなさいね、ルーフェス。ふがいない姉を許して……。
「どっちにしたってルーフェス様からはたぶん、プレゼントに役立つ話は聞けないですよ!」
エマさんが謎に断言すれば、またも「うんうん」と頷きながらカーラさんがあたりを見回す。
「そうだね、ここは専門家に聞くのが手っ取り早いよ。宝飾店に行きましょ」
二人に行きつけの宝飾店を聞かれて、以前お母様に連れられて行ったことがある高級店『プレドール』の名をあげた。
この下町から、貴族が多く住む中央街へと続く道の一角にある、高級店が立ち並ぶエリア……正直、一介の町娘が立ち居るには勇気が必要な通りのちょうど中ほどにあるその店は、他に比べてやや小ぶりで看板や店構えも派手過ぎない落ち着いたお店だ。
店主の方も上品で物静かな老紳士で、物腰がとても柔らかだったし、まだ決定権もない小娘である私にも丁寧に対応してくださったのが印象的だった。
あのお店ならば、とりあえず門前払いってことはなさそうだし、きっと相談にものってくれるんじゃないかしら。そう思ってそのお店を目指してはみたものの、その道程で既に二人は足が重くなっていた。
「うわぁ、私こっちの通りに入るのは初めてだよー」
「だよね、なんだか場違いな気がするものねぇ」
いつになくカーラさんやエマさんもソワソワと落ち着かない。
店内がよく見えるようにだろうか、どこのお店も一枚物の大きなガラスの扉で、煌びやかな店内が透けて見えている。
中に居る人々も、商人で身分的には平民だろうに、来ている服もゴージャスだ。
そしてなにより、防犯対策なんだろうけど、どのお店にもいかにも用心棒って感じの強面のムッキムキな男の人がいて、目を光らせているのが心臓に悪い。