楽しそうな二人
「へぇ、エマったら意外と物知りね!」
「意外とは余計よ」
ちょっとほっぺたを膨らませて見せてから、エマさんはそうに微笑んだ。
「でも、本命のプレゼントがクラヴァットなら、あとは簡単じゃないですか。それに合わせるアクセサリーでどうです?」
「えっ、でもさすがに宝石とか……レオ様、困らないかしら」
驚いてうっかり言葉が砕けてしまった。
だってお父様がクラヴァットにつけるタイピンみたいなアクセサリーって、人差し指くらいの大きさがあるごっつい宝石がついてるんだもの。
その日の服に合わせて宝石も変えているみたいだけれど、あんな見栄えもお値段も張りそうなアクセサリー、さすがにレオさんだって貰ったらヒくんじゃないかしら。
そう正直に言ったら、二人に盛大に笑われてしまった。
「大丈夫よ、きっといろんな種類があるわ!」
「そうですよ、たぶんそのゴージャスなアクセサリーは公爵様の好みってだけです!」
断言された。そうなのかしら、うーん、そうかも。
「うーん、でもそんなアクセサリーってどこで買えるんだろうね」
「さすがにこの辺のアクセサリー店や雑貨屋さんでは無理なんじゃない? 基本、貴族が使うものだもの。それに」
既に二人はどこで買えるかの協議に入っている。真剣な顔で話していたエマさんは、しばし黙考したあと、自信なさげにこう言った。
「クリスティアーヌ様、やっぱり年齢とか家格によっても相応しい装いとかってあるんですか?」
するどい、確かにそれはある。というか、明確なルールが決まっていると言うよりは、色々と慮っておかないと社交界でダメな方で噂になると言うか。
パーティーの主催の奥方様とドレスの色が被らないようにする、とか。
なにかテーマがあるパーティであれば、それをイメージしたアクセサリーをさりげなく身に着ける、とか。
正直私は苦手な分野だ。
むしろルールとか決めて「これだけ守って、あとは自由!」って言ってくれた方がマシなんだけれど。そう話したら、二人も困ったように唸り声をあげた。
「ええー、じゃあ明確な決まりってないの?」
「男性も色々と気にするポイントがあると思いますわ。でも、残念ながら私、男性の装いについては詳しく知らないんですの」
申し訳ないけれど、男性のあまり気にしたこともなければ、身近な人に聞いたりしたこともない。
「ルーフェスならば分かるのでしょうけれど」
私がひとりごちると、二人はまた声をたてて笑い出す。なにがツボに入ったのか分からないけれど、ほんとうに二人はいつも楽しそうね。
「そりゃ知ってるだろうけど!」
「そうそう、レオ様へのプレゼントのためだって言ったらきっと教えるの渋りますよー」
「まあ、そんなことないわ。ルーフェスはツンとして見えるけれど、優しい子ですもの」
誤解されているのが可哀想だと思って慌ててルーフェスを庇ったら、二人は顔を見合わせてまたも噴き出している。