もう、じれったいわね!
うわぁ、なんかひときわ声援が凄い。
男子生徒も女子生徒も隔てなく、通り過ぎる度に両側からたくさんの声がかけられて、それにひとことずつ答えているものだから、旧生徒会の集団からも遅れがちだ。
あまりのレオさんの人気に、なんだか嬉しいような、妬けるような微妙な気持ちが沸き起こる。
だって、声を掛けてくださる大部分の人が明るい笑顔で送ってくださっているけれど、時にボロボロに泣いている女性がいて、それが一人や二人ではないんだもの。
あれって、どう見てもレオさんを好きな方なんじゃないかしら……。
なんだか複雑。
ようやく私たち、新生徒会が待つ門のところまで来た時には、殿下たちもレオさんもたくさんのプレゼントと花束が両腕からこぼれそうになっていた。
卒業生のトリである旧生徒会のメンバーが門を出ると、卒業生の見送りも終了だ。先生方の先導で、在校生たちは次々と教室へ戻っていく。
喧騒が薄れていく門前に、新旧の生徒会メンバーたちだけが残された。
「いい卒業式だった、ありがとう」
殿下のお褒めの言葉に、グレースリア様も嬉しそうだ。卒業式が無事に終わった安心感もあってか、安心したような笑顔で、こちらまで嬉しくなってしまう。
同じく卒業されるクレマン様やその婚約者のリーザロッテ様に、旧生徒会の一員でもあったフェイン様たちが話しかけているものだから、私もちらりとレオ様を見てしまった。
話しかけてもいいものかしら。
レオさんとお付き合いしているのは新旧生徒会の皆が知っていることだけど、だからこそ皆の前で必要以上に会話することは避けてきたから、こんな時どうしていいかが分からない。
「もうじれったいわね、ちょっとあちらで話して来たら?」
「そうよぉ、見てるこっちが照れちゃう」
もじもじしていたら、アデライド様とマルティナ様に背中を押されてしまった。ついグレースリア様を見たら、いたずらっぽく笑って頷いてくれる。
「じゃあ遠慮なく。あ、これ預かっといてね」
「もう……。邸に運んでおくように頼んでおくわ。皆さまの分も纏めて預かりますわね」
腕一杯の花束やらプレゼントやらをグレースリア様に押し付けて、レオさんは颯爽と私の手をとる。そのままぐいぐいと引っ張られて、大きな樹の木陰へと誘われた。
嬉しそうな顔で黙って見降ろして来るレオさんのドアップに耐え兼ねて、一生懸命に言葉を探したけれど、「ご、ご卒業、おめでとうございます……!」なんて、一番ありきたりな言葉しか出てこなかった。
「うん、ありがとう」
にこにこしながら、なおもレオさんはただただ見つめてくる。
こ、困った……。
いつもはレオさんから色々話題を振ってくれるから特に困ったことなんてなかったんだけれど、こういう時っていったい何を話せばいいんだろう。