任命
「まあ、頑張ってくれ」
にこやかな笑顔のまま、おざなりに応援されたフェイン様は、うへえ、という顔をして「できるだけ頑張りますけどね」と自信なさげに請け負った。
「次は……書記をマルティナ嬢に、庶務をアデライド嬢に頼みたい。君たちのこのところの躍進は目覚ましいと聞いている。女性ながらに国の官吏を目指している君たちには、生徒会の仕事は学びになることばかりのはずだ。ここで実力を養って、ぜひ望む未来を勝ち取って欲しい」
「まさか殿下自ら、そのように仰っていただけるとは」
「頑張ります!」
おふたりは感無量とでも言いたげに、目に涙を浮かべている。
この国で女性が能力を期待され、生徒会にスカウトされるという事例は極めて稀なことだ。これまでの彼女たちの努力が少し報われたみたいで、私もなんだか誇らしい。
「そしてクリスティアーヌ嬢、君は会計担当だ。レオからしっかりと引継ぎを受けてくれ」
「はい。レオ様、よろしくお願いします」
「任せて。でも、どの役職もそうだけど、自分の領域のことだけを見るんじゃなくて、互いに協力してアイディアを出し合うことが一番大事だから、皆もそのつもりでいたほうがいいと思うよ」
「はい」
それはレオさんを傍で見てきたから、とてもよく理解できる。
それに、メンバーも見慣れた顔ばかりで、気負わずに意見を出していけそうなのも嬉しい。私の傍で、マルティナ様とアデライド様も力強く頷いた。
きっとおふたりもたくさんのアイディアを出してくれるだろう。私も負けずに頑張らなくては。
その様子を見て殿下も満足そうに深く頷く。
そして、次に視線を合わせたのは私の弟、ルーフェスだった。
「次はルーフェス。君は引き続き、広報を担当してくれ。君の力量に関してはまったく心配していないが、今回はひとつの家からふたりの役員を出すことについて若干迷った。生徒の反応は気にかけておいてくれ」
「わかりました」
「姉さんを助けてやるんだぞ」
「言われずとも」
ルーフェスがあっさりと請け負って、それを見届けた殿下が安心したように微笑む。
「以上だ。グレースリア、君が率いるに相応しい女傑ぞろいの生徒会だ。どうだい?」
「そうですわね、ここまで女性陣が多い生徒会などかつてないでしょうし、楽しみですわ」
「僕たち男は肩身が狭い気がするなぁ。ねぇ、ルーフェス」
「華やかでいいんじゃないですか?」
「うっわ、自分だけいいカッコする!?」
「正直な意見を述べたまでです」
これまで生徒会で苦楽をともにしていたからか、ルーフェスとフェイン様の間には気安い空気が漂っていて、こちらまでなんだか気楽になるのが嬉しかった。