生徒会からの呼び出し
紅月祭も無事に終わり、その後処理すらもすっかり済んで、学園がやや落ち着きを取り戻した頃。新年が明けてすぐのその日、私は生徒会室に呼び出されていた。
目の前に並ぶのは錚々たる面々だ。生徒会長である殿下、その補佐を務める副会長であるクレマン様、会計担当のレオさん、さらにクレマン様の婚約者であるリーザロッテ様など、現生徒会の皆様が並んでいる。
そして机を挟んでこちら側には、グレースリア様を筆頭に、宮廷魔導師でもあるフェイン様、私の弟ルーフェスは勿論、このところずっと私やグレースリア様と学園の試験で首位争いを繰り広げているマルティナ様やアデライド様などまでが招集されている。
時期やこのメンバーの顔触れから見て、次期生徒会の任命打診だと思われた。
「急に呼び出して悪かったね」
殿下がおもむろに切り出した。
「今日はほかでもない、君たちに今後の生徒会を任せたいと思い、ここに集まってもらったのだが」
「随分といきなりですのね、前もって打診などがあるのかと思っておりましたわ」
グレースリア様が、私も疑問に思っていたことをずばり聞いてくださった。
「任命権限は現生徒会長にあるからね、せっかくだから権限を行使させてもらった。だがそう悪い人選ではないと思うよ」
「そうですわね、それは安心いたしました」
「役職については、いったん私の考えを伝えておこう。生徒会長と副会長だけは指定させてもらうが、ふたりを中心に話し合ってもらった結果であれば、役割を変えるのは問題ない」
そう前置きし、殿下が淡々と役職を発表していく。
「生徒会長はグレースリア。君は近い将来、私とともにこの国を導くことになる。まずはこの学園で民の声を聞き、民を導く精神と実力を身に着けて欲しい。……心配はしていないけれどね」
「お任せください。全力を尽くして、期待に応えてみせますわ」
挑戦的な笑みを浮かべたグレースリア様は、うっとりするほど頼もしい。
いつ王妃を名乗ってもいいんじゃないかと思えるほどの貫禄だ。正直私ではこうはいかなかっただろうから、羨ましくもあり、ちょっとだけ劣等感をくすぐられる。
「副会長はフェイン。現生徒会でも書記を担当していたから、過去も含めたこれまでの生徒会の活動を熟知している。生徒会長を助けてやって欲しい」
「了解です。グレースリア様もここ数カ月はほぼ生徒会役員みたいなものでしたから、だいたいのことは滞りなくできそうですけどね。逆にハフスフルール家のお嬢様が暴走しすぎないように、止める係ということでしょう? 僕程度で止められる気もしないんですけど」