表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/282

私、行かなくては

この会場には数多のフリーな殿方もおいでだろうに、そちらには目もくれず、ふたりそろって完全に食べ物に瞳をロックオンしているのが面白い。


やがて、重々しく十九時を知らせる鐘が鳴る。いよいよ学長の訓示が行われる時間だ。



「カーラさん、エマさん、私行かなくては」


「ん? どこに?」


「学長の訓示のあと、ダンスが始まるでしょう? レオ様から近くに来るように言われているの。生徒会の人たちは演壇の近くで踊るらしくて」


「なるほど。寂しいけど、それは仕方がないわね」


「レオ様とクリスティアーヌ様のダンスかぁ。うわあ、夢みたいに綺麗でしょうね」



エマさんが夢見るようにつぶやいている。これは、失敗できない……。



「私たちも見に行こうよ、カーラ」


「うん。けど、私たちはあんまり前のほうに行くと悪目立ちしちゃうからな。ほどほどのポジションを狙わないと」



残念だけれど、貴族のなかにはなにかにつけて、貴族が優先されるという考えの人も多い。


ちょっとしたことで面倒な問題に発展しないよう、こうして爵位を持たない方々が自衛せざるを得ないのは、今後改善したいポイントだ。



「クリスティアーヌ様とレオ様のダンスをこの目に焼き付けてから、この近辺に戻ってこようか」


「うん。デザート食べながら待ってますから、レオ様が生徒会のお仕事で忙しくなって寂しくなったら、いつでも戻って来てくださいね!」



ふたりに見送られ、私はしずしずと、でも内心急ぎ足でレオさんのもとに向かう。人垣の向こうに、レオさんが立っているのが見えた。


その姿は背筋がシャンと伸びて、いつになく凛々しい。


柔らかそうなウェーブの黒髪が真っ白な衣装に映えて、僅かな所作にも気品が感じられる。あまりにも素敵に見えて、少し気後れしてしまったけれど、そんな私に気付いたレオさんがこちらに手を差し伸べてくださった。


レオさんのちょっと垂れ気味の優しそうな目が細められて、まるで「大丈夫だよ」と、声をかけられているみたい。導かれるように、脚が勝手に進み出る。


レオさんの手に私の手が触れた瞬間、レオさんは力強く私の手を握りしめ、勇気づけるように破顔してくれた。シャンデリアの効果だろうか、お姿まで光輝いているように見える。殿下よりも王子様っぽく見えてしまうのは、パートナーの欲目なのかしら。


楽隊が華々しい楽の音を奏で、誰もが表情を引き締めて居住まいを正す。厳格な雰囲気の学園長が演壇に立ち、重々しく訓示が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【作者の先日完結作品】こっちもオススメ♪

ここをポチッと押してね(^-^)

『魔法学校の無敵の首席騎士様は、ちょっとコミュ障、大型わんこ系でした』

先日完結しました。首席騎士様が強いのにカワイイとの感想を多数いただいております(笑)

― 新着の感想 ―
[一言] 度々申し訳ありません。第93話のクリスちゃんが武術の稽古をしている中、トレードマークのふわふわした赤毛のレオ様が顔を出すシーンがありました。今回のお話ではウェーブした黒髪とありましたのでどち…
[気になる点] 地味姫のリンクからきました。とても素敵なお話でここまで一気読みです。 質問が…レオ様の髪色って赤毛だったような気がしたのですが気のせいでしたら申し訳ありません
[気になる点] 93話ではトレードマークの赤毛が129話では柔らかな黒髪になっている。 紅月祭にレオもイメチェンしたのか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ