落ち着くふたり
よかった!
やっと見つけた、カーラさんとエマさん。
思った通り、ケーキやデザートが置かれているあたりで目をキラキラさせていた。昨日もケーキが楽しみだって言っていたから、絶対にデザートの近くに来れば会えると思っていたわ。
「カーラさん! エマさん!」
思わず声が出てしまった。だって今日はもういろいろありすぎて、とてもとても疲れてしまったんですもの。
前世の記憶があるせいか、このふたりの傍にいるととても落ち着くし癒し効果も抜群だから、疲れるとどうしてもふたりの姿を探してしまう。いまは顔を見ることができた安心感で、もう走り出したいくらい。
声の主である私を見て、一瞬「?」と小首を傾げたふたりは、意外にもすぐにクリスティアーヌだとわかってくれたようで、「え!?」「うそー!」とはしゃぎながら小走りで近寄ってきてくれる。
もしかして、声でわかってくれたのかしら。
「あっ、やっぱりクリスティアーヌ様だ、うわあスゴイ! 公爵家のお化粧スキルがハンパない。なんていうかもう別人!」
「可愛い! すっごく可愛い! どうしたんですか、この可愛いドレス!」
カーラさんはなぜかお化粧スキルに感動し、エマさんはドレスを手放しで褒めてくれた。
わかりやすく驚いてくれる様がなんだか嬉しい。ほかの方たちの前に出るのは少し照れたし怖かったけれど、なぜかふたりは普通に受け入れてくれそうな気がしていた。
「わかった、レオ様のプレゼントでしょ? クリスティアーヌ様のいつものイメージとは違うもの」
「うわあ、素敵……。女子憧れの、レオ様厳選ドレス」
なんだろう、ものすごくほっとする、このなんの含みもない女子トーク。
「クリスティアーヌ様をここまでイメチェンできるのなんてレオ様くらいですよね。新たな魅力を引き出すとかレオ様スゴすぎ」
「いいなー! 私もこんな可愛いドレス贈られてみたい!」
盛り上がるふたりに身も心も癒されて、私はようやく会場をゆっくり見回せる気分になった。
ああ、なんて煌びやかな。
たくさんの紅のドレスの波のなかに、青や黒、白、ベージュ、若草色や神秘的な紫など、さまざまな色が鮮やかに映える。
近くを見ればカーラさんは明るいオレンジのドレス、エマさんは淡いピンクのドレスで、ふたりとも普段のイメージにマッチしていてとっても可愛い。
女性たちの装いが華やかだからか、この大広間が通常よりも不思議なくらい煌めいて見える。
いいえ、やっぱり光の加減が通常とは違うわ。