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ついに婚約破棄の日が

「クリスティアーヌ、君の考えに私は賛同出来ない。相手が庶民だからといって、何をしても許されるわけではないんだよ?」



悲しげな瞳で、私の婚約者は言う。



「随分とリナリア嬢に酷い事をしたようだね。……私は、そんな君を国母には出来ない。婚約は破棄させてもらうよ」



穏やかに、でも強固な決意が滲みでる声色で下される皇太子殿下の宣言に、私も粛々と頭を垂れた。



「……仰せのままに」



皇太子殿下と取り巻き達の冷たい視線が降り注ぐ。密室でたくさんの男の人達に囲まれて糾弾されるのって、分かっていた事であってもやっぱりこんなに怖いものなのね。


でも、不思議。本来のゲームではもっとこう……罵詈雑言をぶつけられていたと思うけど、私が反論しないせいかしら?


内心首を傾げながらも部屋を退出しようとする私に、尖った声が追い打ちをかけた。



「本当に……本当にそんなバカな事したのか、姉さん。見損なった……公爵家の恥だ」


「身に覚えはないけれど…皇太子殿下が下された決断ですもの」



私の言葉に、弟は苦虫を噛み潰したような顔をする。実際「酷い事」とやらをした覚えはもちろんないけど、この国で王族の裁定は絶対だ。判決は覆らない。


ただ皇太子殿下は別の意味にとったらしい。深いため息をついて私への処分を口にする。



「私が言った意味が分かるまで謹慎していたまえ。……最後に何か言いたい事はあるか?」



しばらくは顔も見せるなって意味ですね、ご安心を。もう二度と貴方達に会う事なんかないんだから。


……ああ、でも。



「一つだけお願いが。御前には二度と現れませぬ故、此度の事は私一人の咎にしていただきたく」


「もちろんだ、君の父上も弟も優秀な人材だからね。君にも家族を大事に思う気持ちくらいはあったようで安心したよ」



酷い言われようだなぁ。私だってこれまで大切に育ててくれた恩くらい感じてるわよ。


たとえ今夜これから勘当され、これから市井で一人暮らしていくんだとしても。





***************





私が前世の記憶を取り戻したのは、わずか7歳の時だった。


前世の私はバイトに部活にと飛び回る元気な女子高生だった。お父さんとお母さんは共働きだったから、家に帰ればヤンチャな弟二人の面倒を見つつそれなりに勉強して、空いた少しの時間で趣味のゲームを楽しむという忙しくも楽しい日々で。


なぜ死んだのかは分からない。気がついたらこの世界にいて……さらに恐ろしい事にこの世界は、女子高生だった私があの時夢中になっていた乙女ゲームと酷似していたんだから。




そう気付いた時の驚愕と絶望感は忘れられない。

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先日完結しました。首席騎士様が強いのにカワイイとの感想を多数いただいております(笑)

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