前編
今回、長くなって仕舞いましたので区切らせて頂きます。ご了承下さいませm(._.)m
もうすぐ、付き合い始めて二回目のクリスマスを迎える。
なんだかんだ言って、一周年。
今年は、去年断念したものを作ってる。
色は、バレンタインデーに渡した帽子に合わせた色合い。
一緒に身に付けてもらいたかったから……。
「梓。凄く眠そうだね」
そう言って、私の目の下に出来始めた隈を軽く擦る朋子。
「う…うん。ちょっとね」
私は、苦笑して誤魔化す。
だって、ここは教室。
彼も近くに居て、知られるわけにはいかないから…。
バイトは、テスト前だから、お休みを頂いてます。
学生の本職は、勉強ですのでね。
まぁ、テスト前だからって、私は、余り慌ててはいないんだけど……。
ただ、編む時間が限られてるから、寝る間を惜しんで編んでるんだけど、上手いこと進まなくて……。
クラスが一緒だと教室で編むことも出来ず、苦労してるってわけ。
「紫音〜。一緒に帰ろう〜」
教室の入り口から元気な可愛らしい声。
これも、ここ最近の光景。
上靴の色が私たちと違うから、一年生だと思う。
彼女は、何の躊躇いもなく彼を呼ぶから、クラスメートたちが、何やらヒソヒソと話し出す。
彼も満更じゃなさそうだし…。
私、どうしたらいいのかなぁ。
ハァ……。
「待ってろ、梨杏」
名前、呼び捨てするほど仲が良いんだ。
私は、お払い箱なのかな。
何て思いながら、その光景を眺めていた。
「梓、ごめんな。最近一緒に帰れなくて…」
彼が、私の所に来て申し訳なさそうに言う。
「ううん、別にいいよ。彼女待たせちゃダメだよ」
笑顔を貼り付けて言う。
上手く笑えてるかは、わからないけど……。
本当は、行って欲しくない。でも、彼には、彼の予定があるのだから、私が引き留める訳にもいかない。
「…ん。じゃあ、またな」
そう言って、私の頭を軽くポンポンと叩くと足早に彼女の方に歩いていく。
「…バイバイ」
彼に届くか届かない声で言う。
なんか寂しいなぁ。
彼女は、彼が側に近づくと見せつけるように自分の腕を彼に絡めて、私の方を振り向いて嫌な笑みを浮かべる。
ハァー。
そんなに堂々と引っ付かないでよ。
彼は、私の……なのに……。
堂々と言えない私が、いけないのかなぁ……。
妬けちゃうよ。
「何、そんなに寂しいそうな顔してるのよ」
朋子が、私の顔を覗き込んできた。
隠しきれてなかったのか…。
「アイツは、梓しか見てないから、大丈夫だって。それより、勉強教えて」
朋子が、さっきの事が無かったように明るい声で言ってきた。
「うん。いいよ」
私たちは、その後場所を図書室に移し、下校時間ギリギリまで、勉強した。
テストも無事(?)に終わり、お休みしていたバイトも再開した。
クリスマスイブまで、日にちがない。
私は、慌てていた。
彼の身長よりは、長めに編む予定にしていたから……。
でも、今の現状は、半分にも満たしていない。
ヤバイヤバイヤバイ!
本当に間に合わないかも……。
バイトが終わると急いで家に帰って部屋に閉じ込もって、編み出す。
気が付けば、午前四時。
ヤバッ。
少しでも寝ないと、授業中に寝てしまう。
二時間だけの仮眠。
それを四日続いた。
それでも、なかなか進まない状態だった。
「梓。少し、保健室で仮眠させてもらったら?」
朋子が、心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫だって…」
笑顔で、そう答えてる自分がいる。
でも、ちょっと無理しすぎてるかなって、自分でも思ってる。
「大丈夫じゃないって…。アイツも心配そうにこっち見てる」
朋子が、視線を何処かに向ける。
私は、その向けた方に顔を向けた。
そこには、友達と雑談しながらも目線は、私の方を見てる彼の姿があった。
視線が、絡むと友達に断りを入れてから、こっちに向かってくる彼。
「梓。お前、大丈夫なのか?凄い隈が出来てる。テストそんなに酷かった?」
私の目の下に出来た隈を親指で擦ってくる。
勉強で出来た隈じゃないけど……。
「うん、大丈夫だよ。これくらい…」
苦笑を浮かべて言う私。
「梓の大丈夫は、充てにはならないからなぁ。…って事で」
彼は、少し考え込んだ後、何を思ったか、私を抱き上げた。
エッ、エッ……。
私が混乱をきたしてる間に。
「朋ちゃん。こいつ、保健室に連れて行くから、後よろしく」
って、声をかけてる。
「わかってる。そっちこそ梓よろしく」
朋子も理解してるのか、そう答えてる。
「梓。オレの首に腕廻せ。落ちても知らないぞ」
って、私の耳元で囁く。
やっ…それは、絶対に嫌です。
私は、慌てて言われた通りにしのだっのた。
教室を出る時には、キャーキャー(特に女子が)と、騒いでいたのに、廊下に出たら注目を集める羽目になっていた。
「ねぇ、紫音くん。下ろして…」
小声で訴えてみた。
「駄目。どうせ、歩くのも億劫なんだろ?だったら、このままの方が早いだろうが…」
う゛…。
図星を刺され、返す言葉が見つからない。
「…ハァー。梓、無理しすぎだろ?オレ、メチャ心配してるんだからな」
って、いつになく真剣な眼差し。
抱き抱えられてるから、顔が近いから視線を逸らすしかなかった。
「何をそんなに頑張ってるんだ?」
言いたいけど言えないこのもどかしさ。
「…うん。紫音くんが言った通り、勉強だよ。今回ちょっと順位落ちそうだから…。それにね、来年は受験生だし、今から少しでも頭に入れておこうかなって…」
ごめんね。
嘘じゃないけど、今のこの状態は、偽りだから、こう言わないと信じてもらえないと思ったから…。
「ふ〜ん。まぁ、それならそれでいいけど…」
納得してない顔。
でも、本当の事なんて言えない。
その後、無言で保健室にたどり着く。
ガラッ。
「先生」
彼が、室内に居るであろう保険医の先生に声をかけるが、返答がない。
「居ないのか…。まぁいいや。ベッドは、空いてるから」
彼は、そう言って、ベッドの上に降ろしてくれた。
「梓。何か悩みごとでもあるのか?」
心配そうに私の顔を見る。
悩み事?
「別に無いよ」
そう答えた。
「まぁ、いいや。何かあったら言えよ。前にも約束したんだからな」
彼はそう言うと私の頭を撫でた。
「うん」
嬉しいかも…。
こんなにも心配してもらえることが……。
彼には、申し訳ないけど……。
「少し寝ろよ。付いててやるから」
優しい声音で言う彼に安心して目を閉じた。
「う…う〜ん」
意識が覚醒して、辺りを見渡す。
白い天井にカーテン?
ふと、視界の隅に先生の姿。
「あら、目が覚めたようね」
先生が、私の方にやって来る。
「しかし、凄い隈ね。そんなに勉強が大変なのかな?優等生の田口さん」
って、苦笑してる。
「…あ、あの〜その…」
しどろもどろの私。
「って、冗談よ。もうすぐクリスマスだものね。女の子なら手作りの物を渡したいよね。ただ、無理しすぎは返って他の人に…彼に心配させるだけだから、気を付けなさい」
アハハ、バレバレだ。
恥ずかしい。
「…はい」
「今日は、もう帰ってもいいわよ。もうすぐ迎えに来ると思うし…ね」
先生が、茶目っ気一杯で言う。
??
私は、部屋にある時計に目をやった。
エッ…四時?
私がここに来たのって、二時間目が終わってから。
五時間も寝てた。
何しに来たんだ?自分。
「梓」
保健室の戸が開き、名前を呼ばれた。
「紫音くん。あれ、彼女はいいの?」
片手で、私の分の鞄を持ちながらこっちに歩いてくる。
「彼女は、梓だかだからね。梓の方が心配だから、家まで送って行くよ」
「ありがとう」
「ん、当たり前でしょ。大切なオレの姫だから…」
真顔で言うから、照れてしまう。
「帰ろうか?」
「うん♪」
自然と笑顔がこぼれる。
「先生、ありがとうございました」
「ハイハイ。しっかり睡眠とるのよ」
先生は、にっこりと笑って見送ってくれた。