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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
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子育て勇者と魔王の子供・71

長いお話ですなー。お付き合いくださる方、ありがとうございます。

「ほっほほ~♪」


 女性の笑い声がしたような気がした瞬間、『何か』が、急激に去っていく感覚がした。

 とりかえしのつかない、『何か』。

 止めようにも止められない。そんな感覚。

 目の前には、成長したあの双子。隣のユーヤにくっついている美少女イリアと、その二人を見て非常に嬉しそうにしている美少年イリック。

 

『何か』が変わってしまった。オーラはそれだけを自覚してしまう。


 ※※※



「いいいいい、イリア!? 一体何がどうしてそんなに大きくなったんだ!?」

 動揺するユーヤに、イリックがにんまりと笑って言う。

「にーちゃん、おれもでかくなったんだけど。イリアしかめにはいってねーの?」

 指摘されて赤くなるユーヤだ。

「イリックも! なんでこんなに大きくなった!?」

 腕に張り付いているイリアを押しのけたらいいのかどうしたらいいのか、ユーヤは混乱しきりである。

 押しのけるべきか。でもいやこの子ら本当は四歳児でまだ子供。押しのけたらかわいそうな気も。

 いやしかし、イリアがこのままくっついているのもなにかまずい気が!?

 ユーヤは助けを求めて周囲を見た。


『彼女』。めっちゃ笑っている。助けてくれそうにない。

 オーラ。さきほどまで叫んでいたのに、今は眉を寄せている。同じく助けてくれそうにない。


 ここに味方はいないのか。ひきつるユーヤである。

「いいい、イリア? あのな、その、何が原因でこうなったんだ?」

「はなよめしゅぎょうもかねて、おとーさんのおへやをおそうじしてたです。そしたらなにかへんなくすりをあたまからかぶりました。きがついたらおおきくなっていたので、おかーさんのふくをかりておにーさんにまたぷろぽーずをしにきたです!」

 ……自分で飲んだとは言わないあたり、狡猾である。イリックも激しくうなずいている。

「うんうん、そうそう。あれはじこだよな。じこ」

「そうです。じこです」

「おれ、とーちゃんのふくかりてきたんだー。かっこいい?」

 胸を張るイリックは魔王ルックだ。漆黒の衣服になにやら高そうな縫い取りの入った衣装。おそらく魔法の効果もありそうな、そんな衣装。

 ただ、まだ成長しきっていない少年の顔で魔王ルックは似合っていない。威厳がないと言うか、はつらつ元気な印象である。大人のフリをしている子供、そのままだ。

 そんな印象を与えるのは、双子のどちらとも微妙に体格に合っていないので、衣服がだぶついているせいもあるのだろう。

「おかーさんはせもむねもおおきいから、だぼだぼなのです。むう。もうすこしおおきくなったらおかーさんみたいにむねがおおきくなるといいです。おにーさんはむねがおおきいほうがいいですか?」

 真顔で見上げられ、ユーヤはのけぞった。誰だこの子らにこんなこと教えたのは。今すぐ前に出ろ。殴って飛ばしてやる。というか誰でもいい、なんでもいい、いますぐなんとかしてくれ。


 ――無論、誰も何もなんともしれくれない。自分の力でどうにかするしかないのだ。

「……そんなことより! 薬ってなんだ薬って!?」

 イリアから微妙に視線を逸らし、ユーヤは羽織っていた上着を脱いで彼女の肩にかぶせた。

 だぶついている服から何かが見えそうな気がしたのだ。母親が巨乳。娘はまだ成長途中、と、言えばおのずと想像できよう。 

「おにーさん、わたしべつにさむくないですよ?」

「良いから着てなさい。着ててくれ頼むから。それよりも薬って!?」

 どうにか話を逸らしてしまいたい。そんな心境。イリアは首をかしげてから、ユーヤの来ていた上着だと気が付いて、嬉しそうにぎゅっと胸元を握るようにしている。可愛いとか思ってないぞ。ドキドキなんてしてない。四歳児四歳児四歳児。ユーヤは祈りの言葉のように内心でつぶやく。

 気付いているのかいないのか、イリックはしれっと答えた。

「なんかしらねー。ぴんくいろのいいにおいのくすりだった」

「くちにはいりましたけど、おちゃみたいでおいしかったです」

 イリアもしれっと答える。


 返答に、ユーヤは青くなった。元魔王の部屋にあった変な薬。それを双子は口にしてしまったと言う。異変の原因が分かったのはいいが、非常にまずい気がしている。 

「飲んだのか!? そんなえげつない色した薬を!? か、体は何ともないのか!?」

「でかくなった」

「せいちょうしたです」

「そうじゃなくて!! こう……どこか痛いとか苦しいとかは!?」

 ユーヤの勢いに、双子は顔を見合わせた。

「……どっかいたいですか、イリック」

「べつに。イリアは?」

「いたくないですし、くるしくもないです。しいていえば、おかーさんのふく、あしもとがあまってあるきづらいです」

「あ、おれもー。とーちゃんのふく、ずるずるしててうごきづらい」

 のんきな双子だ。ユーヤは青い顔のまま、双子をそれぞれ腕に抱えた。

 そしてそのまま実家に向けて駆け出す。

「おおおおお、にーちゃんどーした?」

「おにーさん、すごいです。おおきくなったわたしとイリックかかえてはしれるですか。ちからもちです。ますますほれます」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!?」

 とりあえず、実家に戻って双子に着替えをさせよう。義姉に預けて、元魔王のところに走って行って、双子がこんなことになったことを知らせて、異変の解消を相談しなくては。


 ユーヤは動揺のあまりに気が付いていない。

 隣のオーラと、その兄カリスが、薬系統にめっぽう強い知識を持っていることに。


隣の賢者の卵と賢者に相談することすら思いつかずにあわてている勇者の図。

ちょっと落ち着け(無理だろう)

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