子育て勇者と魔王の子供・67
今回短いです。転職したばかりなので仕事が忙しく、更新が遅くなってすみません(土下座)
夕方まで祖父の作業を手伝って、双子はずいぶんと楽しんだようだった。
祖母の作ったお菓子を食べて、また収穫を手伝って、果物を収穫した。
夕食に母親と食べる、と、喜ぶ双子をほほえましく見守って、家まで送った。
「それじゃあ、また明日な。明日は何をしようか、ちゃんと考えておいて」
そう言うと、
「おにーさん、おにーさん」
イリアに手招きされた。なんだろうと視線を合わせるためにしゃがみ込む。
にっこり笑って寄ってきたイリアに。
ちゅ。
「っ!?」
「きせいじじついっこめです」
「おー!!」
イリックが拍手をしている。目玉が飛び出そうな気がして、ユーヤは裏返った声を出した。
「い、イリア?」
「きせいじじついっこめです。さよならのきすです。あしたはおはようのきすをしようかともくろんでいます」
なんて積極的な幼女。いや違う。
「ちょ、ま、いやあのな、こういうことは大きくなってから好きな人とっ」
大動揺なユーヤだ。自慢じゃないが、彼女も居ないままの今までの人生、こんなことをしたこともない。
「おおきくなってすきなひととしますよ? おおきくなってもわたしのすきなひとはおにーさんです」
断言。イリアの隣でイリックがまた拍手している。ぽちはあんぐりと口を開けて固まっていた。
俺も固まりたい。背中に嫌な汗を感じながら思うユーヤだ。
「イリア、すげー」
「おんなのこはせいちょうがはやいのですよ、イリック。ぼやぼやしてたらとられますからね」
「おー、すげー」
何故得意げなのだ、イリア。そして何故感心するのだ、イリック。
というか、自分、油断しすぎだろう。本当に何ひとつ予想していなかったので、心底から驚いて、反応できない。
「あ、う」
どもる勇者に、魔王の息女はニコリとほほ笑んだ。
「きせいじじつでどんどんかためていきます。おにーさん、わたしはほんとにほんきでおにーさんにけっこんをもうしこんだのです。だから、ようしゃはしません」
気が付いたら、双子は家の中に入っていた。自失していたのはどのくらいの間だったのか。
……何をどう間違ったのだろうか。
どこで間違ったのだろう。
確実に言えることは、双子の父親兼元魔王が回復したら、速攻で説教する、ということだった。
あと、双子の母親=死の化身に、土下座。
ほっぺにキスくらいで何もそこまで、と言うなかれ。
イリアなりに本気なのだろうし、双子の両親に知れたら殺されそうな気がしてきたからである。
「ああ……明日の朝は少し早目に来て……奥さんに詳しい説明と謝罪と家庭教師の変更をお願いしよう……」
とぼとぼと実家への道のりを歩むユーヤは知らない。
翌朝、今度はイリアからの唇へのキスが待っており、目撃した母親に「よぉし責任をとれ貴様ぁ!!」と迫られることを。
ユーヤは知らない。
実は母と娘、さらに息子までもが共謀していた出来事だと言うことを。
既成事実。そのひとことが、背に重くのしかかることを。
こんぐらいやらないと、この勇者気付かねえし、と、思った次第(笑)




