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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
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子育て勇者と魔王の子供・63

 元魔王の看病をしつつ、、双子には絵本を読み聞かせ……そうしているうちに、双子はぽちを枕に眠ってしまった。幼児には大切なお昼寝タイムである。

 元魔王も眠りが深くなったのか、うわごとを言わなくなった。さらにヤバイ状態になったのかもしれないとちょっと思う。危篤状態だったらどうしよう。どうしようもない。

 医者ではないユーヤにこれ以上のことは無理だ。小さな農村なので、医者もいないのである。

 よって、今できることは双子の面倒を見つつ、奥さんが帰ってくるのを待つだけである。

 双子はぽちの毛皮を下にしているので、こちらは風邪をひくこともないだろう。一応、ベッドから毛布を失敬して双子にかけておいた。

 ぽちも眠ってしまっている。家の中は静かだ。それぞれの寝息がするだけである。

 元魔王はぴくりともしない。イリアの作った氷を入れた氷のうで額を冷やしているので、熱は落ち着いてきたのだと思いたい。

 なんで俺が看病してんだろう……?

 疑問を抱きつつ、ユーヤは絵本を片付けた。旅の途中で双子に買ってあげたものである。ユーヤが双子に与えたものは全てこの家に運び込んだ。

 服や絵本、靴なども全て。

 きっと、ゆうべのうちに奥さんが家の中に仕舞い込んだのだろう。実に働き者の奥さんである。今朝も双子に朝食を食べさせて、すぐに仕事に行ったという。

 死の化身にお休みはないようだ。


 ノドが乾いてきた。双子と元魔王、ぽちは完全に眠っている。起こさないようにそうっと部屋を出た。

 家の外に井戸があるはずだ。水でも飲んでしゃっきりしよう、と、水をくみ上げた。

 冷たい井戸水でノドをうるおしていると、視線を感じた。顔を向ける――知らない顔がこちらを見ていた。

 やたらと嬉しそうな、これまた結構な美人が、家の角から半分だけ顔をのぞかせている。

「……あのう……どちら様で?」

 知り合い、ではない。少なくとも覚えがない。服装から、村の人でもなさそうだ。作業のしやすい農村ルックではない。どこかで見たような服……そうだ、曾祖父母の着ている服に似ている気がする。ということは、この人も魔法使いなのだろうか。曾祖父母の知り合い? 何故覗いているのか。祖父母に用なら家は隣で、ここは元魔王と死の化身の家である。物騒なご夫婦の知り合いなのだろうか。

「ほっほほ~、気にしないのよ♪」

 今にも歌いだしそうな上機嫌っぷりである。しかし、相変わらず顔を半分のぞかせているだけで、近づいてこない。

「?? いえ、あの、気になります。ええと……ここのお宅のお知り合いで?」

「違うのね、でも知り合いとも言えるのね、気にしないのよ♪」

 いや気になる。何だこの女性。

「ほっほほ~、桃色大事よ♪」

 にこにこしながら、覗き見。そんな態度だ。

「君もそのうち桃色になるのね。幸せ桃色よ♪」

「は?」

「よりどりみど~りね♪ ほっほほ~♪」

 ひらひらと手を揺らし、謎の女性は立ち去った。

「……誰なんだ今の人……」

 何が何だかわからないまま、ユーヤは取り残された。

 桃色って、何だ。


 首をひねりつつ、家の中に戻ろうとしたら、義姉の姿が見えた。双子に牛乳でお菓子を作ってくれると言っていたが、わざわざ届けに来てくれたらしい。

「ユーヤくん。あの子らは? 家の中か」

「ええ、今昼寝してます」

「そうか。さっき絞ってくれた牛乳でお菓子を作ったんだ。あの子らにあげてくれ」

「はい。ありがとう、義姉さん」

「どういたしまして。子守頑張れ」

 美人の義姉は、綺麗に笑って菓子の乗った皿を渡して去って行った。ユーヤの周りの女性は美人が多い。もっとも、兄夫婦はお互いにべた惚れなので、義姉がどんなに美人でも兄の嫁としか思えないユーヤだ。

 皿を手に家の中に戻って、とりあえずテーブルにお菓子を置いた。双子が起きてから食べさせればいいだろう。椅子に座って、ぼんやりと考える。

 ……魔王を倒すために旅をして、ただひたすらに戦って、人に危害を加える魔物を倒して……魔王の双子を預かって、故郷に帰ってきた。

 生きて帰ってこれた。

 兄の言葉を思い出す。

 魔王を倒してもユーヤの人生は終わりじゃない……確かに、そうだ。

 将来のことなど考えてもいなかった。ただ、魔王を倒すことだけを考えていた。それが、魔王は病死し、大魔王も復活せず、双子も両親と再会し、自分も故郷に帰ってきた。

 これから。これから。

 これから先……。


 やりたいことが消えてしまった。昨日の今日では何も思いつかない。


 将来。


 未知の領域である。できることはある。農村なのだ、畑を耕すにしろ、牛の世話をするにしろ、若い働き手は貴重。ユーヤは体も頑丈なので、お城の兵士をまた目指すと言う手もある。幸いというか、この国の王にコネはできた。使うと大変なことになりそうなので、今のところコネを使う気はない。少なくとも、姫とか王妃がこちらのことを忘れてくれるまでは。

「……じいちゃんの畑でも手伝おうかなぁ……」

 いま思いつくことはそれくらいだ。

 ちらりと、女性たちの顔がよぎった。彼女らのことも考えたほうが良い。

「うおお……どうしたらいいんだ……」

 何せ今まで女性とお付き合いした経験などない。祖父は今のユーヤと同じ年に祖母とカケオチしたというが、どれだけ積極性があるのか。

 どうしよう。

 どうしたらいいのだろう。

 若き勇者は、頭を抱えて考え込んだ。


元凶が覗いてますな(笑)気付いてー。勇者気付いてー。

……皆様、ヒロインはイリアとオーラのどちらがよろしいのでしょうか……? 今現在悩み中なのです。ご意見いただけたらありがたいです。どっちもやだー、あるいは、どっちも選べないので両方で! というご意見も可(笑)

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