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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
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子育て勇者と魔王の子供・61

PVが100万越え、ユニークも10万越えました! ありがとうございます!

未知の世界……(呆然)

「ユーヤさん!」

 双子と牛の乳しぼりをしていたら、オーラに名を呼ばれた。どこか焦ったような声音である。

 そう言えば昨日は祖父母宅に泊めてもらっていたなぁと思い出して顔を上げると、どこを見ても姿がない。

「あれ? 今、オーラの声がしなかったかな」

「しませんでした」

「きのせいじゃねー?」

 不自然な突風がオーラを吹き飛ばしたことを、ユーヤは知らない。

「おにーさん、おちちしぼってうしはいたくないですか?」

「ああ、大丈夫。絞らないと逆に苦しいんだよ、牛乳でお乳が腫れるから」

「そっかー。うし、おれちゃんとしぼってやるからな! だいじょうぶだぞ!」

 小さな手で、一生懸命乳を搾る。幼児なので握力がそんなに強くない。ユーヤも手を添えて手伝ってやる。

 バケツに溜まっていく牛乳に、双子は目を輝かせて嬉しそうだ。

「わたしとイリックとおにーさんでしぼったぎゅうにゅうですね!」

「おれたちがんばった!」

 達成感である。自分の力で頑張ったと思うことが大事なのだ、とか思ったユーヤだ。大分子育てが上手くなってきたのかもしれない。


「あ、ユーヤ……」

 今度はイトコのネィナの声が聞こえたような気がする。顔を上げても誰もいない。遠くで兄が作業しているのが見えるだけだ。

「?? さっきから声がするような」

「きのせいです」

「こえなんてしなかったよ、にーちゃん」

 ネィナの足元が抜けて、地中深く落ちた彼女が動く土に運ばれていったことなど、ユーヤは知らない。

 ちなみに、ユーヤが顔を上げるより早く、穴はひとりでに埋まった。

「にーちゃん、しぼったぎゅうにゅうはどーすんの?」

「あ、えーと、向こうに持っていこうか」

「おひるにのめる?」

「そうだな、聞いてみよう」

「あの、ユー」

 びゅおう! 突風が吹いた。飛んでいきそうなくらいに強い風だ。とっさに双子を抱えて、怪我をしないようにかばう。声をかけようとした幼なじみのミリーナがどこに行ったのか、ユーヤは気付かなかった。

「今日は風が強いなぁ……」

「そうですね。ふしぎです」

「ふしぎふしぎ!」

 双子はしっかりとユーヤの手を握っている。可愛いなぁとほのぼのしながら、兄のところに向かった。絞った牛乳をお駄賃代わりに子供たちに貰おうと思う。


「貴様、王子と姫に労働させるなど、一体どういうつもりだ!?」

 と、柵の外でお座りしていたぽちが叫ぶ。ユーヤは苦笑した。

「大げさだなぁ。お手伝いしてもらっただけだろ」

「おだちんにあめもらいました!」

「しぼったぎゅうにゅうで、ひるからなんかおかしつくってくれるって!」

 お手伝いありがとうと兄に飴玉をもらい、お手伝いのお礼に牛乳でお菓子を作るからと兄嫁が笑ってくれたので、双子は上機嫌である。

「ほら、ぽち、あめだまいっこわけてあげます。ありがたくたべなさい」

「おおお、姫、なんと慈悲深い……下僕にそのようにお慈悲をいただけるとは……」

 がりんごりん飴をかみ砕くぽちである。犬に飴をやっても良いんだろうか? まぁいいか、ぽちだし。

「そういえば、さきほど村長の娘だかなんだかが歩いてましたぞ。何やら青ざめて帰って行きましたが。勇者、アレはお前の女では――」

 言った瞬間、爆音と共にぽちは空高く飛びあがった。コノヤロウ余計なことを、と言いたげなイリックである。イリアもまた可愛らしい顔をしかめている。ぽちを見上げていたユーヤは気付かない。

「え? スーリアが? 何か用事だったのかな?」

「かえっちゃったんだから、きっとたいしたようじじゃねーよ、にーちゃん。きにすんな!」

「そうですよ。ほんとうにようじがあるならまたきます」

 実家までの道を歩きながら、双子に言われた。ぽちはよろよろとついてくる。相変わらず頑丈である。

「それもそうかな。大事な用なら家のほうに来るだろうし……」

 急ぎではないのだろう。多分。

 とてとてと、家路を歩く。お昼からはなにをしようか。勉強は昼前に結構進んだし、かけっこでもして遊ぼうか。村の中を案内するほうが先か。散歩を兼ねて歩くのが良いかもしれない。

 ああ、その前に元魔王と話し合いをしなくては。

 午後からの計画を頭の中で立てながら、家に帰った。



「あいたたたた……あれはイリックくんね……」

 村のはずれ、ユーヤの祖父の畑がある近くで、オーラは木に引っかかっていた。

「……なんなの、コレ……?」

 同じように、しくしくと泣くミリーナも木に引っかかって宙ずりになっている。

 その木の根元に、地面からネィナが吐き出された。土まみれだ。

「……何コレ……どういうこと……?」

 正しく状況を理解しているのは、自分だけだろうとオーラは思った。

 まずい。完全に双子が敵に回った、とも。

「ま、負けるもんですか……!」

 根気強く呟く。まずは、この木から降りることから始めよう。

 対抗策を練るのはそれからだ。

双子の鉄壁ガード! 女性陣は突破できるのか!?

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