子育て勇者と魔王の子供・7
朝。野営の後片付けをしてから、朝ごはん。
魔王の子供たちは素直で、後片付けもきちんと手伝ってくれた。
「君達、良い子だな」
「いいこ? おれ、いいこ?」
「いいこですか? りっぱなまおうになれますか?」
「……いや、魔王は目指さない方がいいと思うよ」
はた迷惑な遺言を残した魔王を思い返し、やっぱり復活したら殴ろうと思った。
「えー、だってとーちゃんかっこよかったよ」
「かっこ良かったか……でも、いろんな人に迷惑かけてたからさ……」
なんと言えばいいのか。子供にあまりひどいことは言いたくないけれども、魔王のしたことは残虐非道だった。二つの国が滅んでいる。魔物に襲われて、滅んだ村は幾つあるのだろう?
「めーわく? とーちゃんなにしたんだ? せかいせいふくしてはーれむつくるっていうのはわるいこと?」
ユーヤの目が点になった。
「おとうさん、おとこのゆめっていってました。わるいことだったのですか?」
魔王、今すぐ復活しやがれ。その瞬間にぶん殴る。
「……悪いことって言うか……人に迷惑かけたらいけないんだよ」
「はーれむってめいわくなのか?」
「……とりあえず、人の意見を聞かずに作るのは迷惑なことだね……」
そんなもん目指してたのかあの魔王。そりゃ奥さんに別居されるわ。どんな人(魔物?)か知らんが。
しかし、奥さん。あなた子供も連れて行くべきでしょう。ハーレム目指すようなバカ魔王のところに、こんなに素直な良い子を置いて行くなんて酷いじゃないか。
魔王の奥さんってどんな人なんだろう。一回会って説教したい。子供を置いて行くなよな。
「そうですか。はーれむはいけないことですか。おとーさん、だめです」
イリアが可愛い顔を膨れさせている。
「だめなのかー。おれもまおうになったらやってみようとおもってたのになー」
イリックの言葉に、ユーヤはブンブンと首を横に振った。
「駄目駄目駄目! 真似しちゃ駄目だ! ……さ、そろそろ行くぞ」
こんなに素直な良い子たちを、第二第三の魔王にするわけにはいかない。
双子は自然とユーヤと手を繋いできた。
小さな手は柔らかく、頼りない。
護ってやらないと。
「にーちゃん、まおうってなにするんだ? とーちゃんにきいてもおしえてくんなかったんだ」
「……知らなくていいと思うよ」
「どうしてですか? おとうさん、たのしそうでした。まおうってたのしいのではないのですか?」
「……あんまり楽しくはないと思うな……」
魔王、復活しやがれ。昨日から何度思ったか分からないが、とにかくぶん殴ってやる。
どうやって話を逸らそうかと考えながら、ユーヤは歩き出した。
昨晩の気配のことも、警戒しながら。
はーれむ……うん、駄目オヤジ魔王です(笑)