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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
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子育て勇者と魔王の子供・59.5

 昨日は盛り上がった。

 主に、ユーヤに対するいろいろなことで。


 イトコや幼なじみの女性たちも、オーラと同じことを感じ、想い、イライラし、時には歯噛みしてあのにぶちんに付き合ってきたとのこと。

「村を出る前に許嫁候補のことを言ったのよ!? 兵隊にならないでって言ってるようなもんでしょ!? なのにあのトーヘンボク、『俺は自分にできることをしたいんだ』とかなんとかわけわからない男理論でさくっと出ていきやがったのよ!」

 とは村長の娘・スーリヤの言葉。

「わかるわよ、スーリヤ! アタシなんかね、婿に困ったらもらってあげても良いわとまで言ったのよ!? なのにあのボケ勇者、ネィナねえさんには、もっといい人がいるよとか何とか言って流したわ! 女心をなんだと思ってんのあのボケ」

 と、イトコのネィナは幼少からの苦労を語る。

「わ、わたしは……い、いつまでも待ってるから、って……でも、意味を分かってくれてないっぽいの……」

 幼なじみのミリーナは、ぐすぐすと泣きながら言った。そんな経験談を限りなく聞きながら、ふと思ったことを彼女たちに聞いてみる。

「……つかぬ事をお伺いしますが、みなさん、ユーヤさんに告白とか求婚とか自分でしました?」


「「「なんでそんなことを女からしなきゃいけないの?」」」


 実にすがすがしいほどに女性視点ばかりである。

 オーラは痛感した。ユーヤのあの恋愛に痛恨なまでにっぶいところは、こういう女性たちがずっと傍にいたからだろう。ぬるく、じわじわと、しかし近づくことなく、なのにあきらめることのないこの女性陣。性質が悪いことに、恋敵を排除しまくっている。最初オーラに向けられた敵意もその一つだ。

 これは、鈍くなるわけだ。向けられる好意にはっきりと恋や愛という名をつけることがないまま、生きてきたのだから。

 彼女らのグチを聞きながら、オーラは思った。

 この状態が当たり前なら、恋愛感情にまで結びつくわけがない。気が付くわけがない。誰も彼に想いを告げていないのだから――自分も含めて。

 愚痴大会を終えたころにはすでに日が暮れていた。ユーヤの祖父母が泊めてくれると言うので、頭を下げて泊めてもらった。


 そして、今朝。

 朝ごはんをごちそうになって、申し訳ないからお手伝いを、と、申し出て、若くて綺麗な祖母と呼ぶのもはばかられる女性にユーヤのことを訊いてみようと思ったら、スーリヤがほかの二人を連れて来た。

 ユーヤに関して話があると言う。

「え、あの、何のお話でしょう?」

「抜け駆けはしないように、って言いに来たのよ」

 にっこりとほほ笑んで――目が笑っていない――ネィナが言う。オーラは素早く思考を巡らせる。

 まずい。不可侵条約とかそういうものに巻き込まれる。

 そうなると、ユーヤに対しての行動が著しく制限されるのだ。いや、村から追い出されるかもしれない。双子を心配して、という建前でついてきているオーラは、双子が両親のところに帰った今、完全に部外者だ。関わる理由がない。

 あのニブチンのトーヘンボクのお人よし勇者と、離される。

 そうなったら……?


 困る。

 非常に、困る。

 嫌だ。何の決着もつけないで、この想いをただ打ち捨てるようにあきらめるのは、嫌だ。

 そんな風に終わりたくない……終わらせたくない。


「おじゃまします」

 そこに、イリアが訪れた。幼女は可愛らしい笑顔で、オーラを見る。

「おはようございます、おねえさん」

「お、おはよう、イリアちゃん」

「はい。さっそくですが、せんせんふこくにきました。おんなのひとがみんないっしょにいるならつごうがいいです」

「え」

 宣戦布告? まさかぽちのように吹っ飛ばされるのだろうか。オーラは身の危険を感じた。が、下がることはしない。ナニカされたらユーヤのところに走ろうと決めた。それを口実にして勢いで告白してみようとか思った。村の女性陣に牽制される前に行動しちまえばこっちのもんだと思ったところに、斜め上の宣言が来た。

「おにーさんとけっこんするのはわたしです。あさいちばんでぷろぽーずしてきました!」

「えええええええ!?」

 なんという行動力。いろいろ見習ったほうが……いや違う。そうじゃない。

「い、イリアちゃん? ユーヤさんと年の差がどのくらいあるのか分かってる?」

「わかってます。でも、にょうぼうはわかいほうがいいのです。おにーさんのおじーさんもおくさんがわかいです。ちすじてきにおさなづまずきなのです」

「誰なのあなたにそんな言葉を教えたのはっ!?」

 自分は教えていない。おそらくユーヤでもないはずだ。こんなことを教えてはいないはずだと、我が身を振り返っているオーラに、イリアはケロッとして言い放った。

「おにきすとかさふぁいあです。わたしとイリックにろくでもないことをふきこむのは、たいていあのろくでもないしてんのうですから」


 魔王の配下の四天王、双子にはそんな扱い。

 いや今はそれはどうでもいい。

 今現在の大問題は、イリアの発言である。

 そして、ユーヤの祖母は実際若い。とても若い。オーラとあんまり変わらないくらいに見える。

 後妻なのだろうか。いやでも昨日聞いたときは確かに実の祖母とか言っていた。幼な妻好きというか極端に童顔? そういうのが好き? そんな血筋?

 さーっと血の気が引く音を聞いた気がする。

 まさかそんなもしかしてでもたしかにあああそんなことないわでもいままでそういう浮いた話をユーヤさんから聞いたことないしもしかして本当にすっごく年下が好きでいえでも最初に会ったときは違うって言って。

 ぐるぐる考えていたら、誰もいなくなっていた。

 相当長い間思考に没頭していたようである。動かないオーラにあきれてみんなどこかへ行ったのか。


 はーっと長く息を吐いて、オーラは覚悟した。

 ……幼女に負けていられるか!


オーラが何か決断しました。

〈告白ふらぐが立ちました!〉

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