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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
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子育て勇者と魔王の子供・56

PVやユニーク、お気に入りがとんでもないことになりました。ありがとうございますありがとうございます。頑張って更新しますので、ぐだぐだ話ですが、よろしくおつきあいくださいませ。

 祖父が入れてくれたお茶を飲みながら、双子の母親=死の化身はユーヤに微笑んだ。

「頼みがある。実はもう少し子供の面倒を見てもらえないだろうか」

 ――と。


 双子は表情を輝かせてユーヤを見ている。頷いてお兄ちゃんといいたげだ。

 非常に可愛い。とてもかわいい。頭を撫でてあげたい。父兄心が刺激される。

 が、うなずくわけにはいかない。何せ目の前にいるのは可愛い双子の実の親。

「何故ですか? やっと両親と一緒に住めるというのに」

 親といるのが一番いい。まぁ、元魔王のほうはいろいろ問題があるだろうが、母親のほうは真人間というか普通の人――考え方と行動が――だと感じられた。ならば、子供と一緒に生活したほうが良いだろうと思う。

 子供たちだって母親のことは好きだと言っていた。父親だって一応は好きなのだ、多分。

「うむ。私とて子供と一緒に過ごしたいのはやまやまなのだが、仕事が仕事でな」

 憂鬱そうにつぶやき、死の化身は茶菓子をつまむ。

「宅の馬鹿亭主のおかげで、人間の死者が相当数出ただろう? その整理も終わっていない上に大魔王の馬鹿を連行しなくてはならない。仕事が山積みなのだ、アホ魔王と超バカ大魔王のおかげで」

 納得した。ものすごく忙しいのだ、この母親。

「毎日早朝から深夜まで冥界に出勤しなくてはならない。その間、子供たちをアホ魔王に預けておくとどういうことになるか……不安なのだよ。分かってくれないか?」

「すごくよく分かります」

 あのハーレムがどうのこうのと言い募る元魔王に、この可愛い双子を預ける……悪影響しか思い浮かばない。

「昼の間だけでもいいから、どうか子供たちの相手をしてやってくれないか? もちろん、礼はする。手始めに養育費の返還はしなくていい。好きに使ってくれ。そのほかにも、礼はする」

「はぁ……いや、礼とかそういうのは良いですが。子供たちも良い子ですし。面倒を見るのにやぶさかではありません。でも、俺で良いのですか? 特に学があるわけでもないですよ」


「君が良い」


 人妻で二子の母である死の化身は、それはもう美しく微笑んだ。

「何より誠実だ。うちのバカと違ってな。子供たちもなついているし」

 にこにこ。機嫌よく双子の頭を撫でながら、死の化身は笑っている。

「うん、おれ、にーちゃんすき!」

「わたしもおにーさんすきです。もじもおしえてくれました。おりょうりもじょうずです!」

 イリックとイリアは相変わらずなついてくれている。

「この通り、子供たちが君を好いている。身元もしっかりしているしな。私の親友の孫だ。その点ではとても安心できる」

「はぁ……」

 祖母もにこにこしている。死の化身とかそういうのも関係なく、穏やかな友人関係のようだ。ばあちゃんナニモノ? ちょっと思ったユーヤである。祖父が元冒険者なのは知っているし、曾祖父母が凄腕の魔法使いということも聞いているが、祖母は特に何かすごいことができるというわけではない、と思う。ユーヤが知らないだけで、実は祖母もすごい魔法使いだったりするのだろうか?

 この温和な祖母が、どかんどかん魔法を使うところなど想像しにくいが。

 まぁ、特に危険なことがないのならそれで良い。

「帰って来ちゃいましたから、しばらくはゆっくりしようかと思ってましたし、子供たちの面倒をみるのは良いですよ。俺も途中で別れることになるのは寂しいし」

 子供たちとずっと一緒だったのだ。ユーヤのほうも別れるのは寂しい。


「にーちゃんにもじおそわるんだ! べんきょうまだとちゅうだもん!」

「そうです。おにーさんにおりょうりもおそわりたいです」

 双子は挙手までしてユーヤと居たいと訴えている。可愛いなーとユーヤはデレた。弟妹ができるってこういう感じなのだろうか。末っ子なのでよく分からないが、慕われると純粋に嬉しい。

「そうかそうか。子供たちもこう言っているし、君も引き受けてくれるならとてもありがたい」

 と、母親。死の化身とか言う話だが、こうしてみていると普通の母親だ。若くて綺麗で優しくて。

 ドアのところで凍り付いている亭主=元魔王が見えなければ、の話だが。

「君の実家はどこだ?」

「は? ああ……少し離れたところです。でも、近いですよ。ナッシュさんち分かります? そこをまがって三件目の農家です」

「ああ、分かった。牛を飼っているところだな?」

「そうですそうです」

 実家はめっちゃ農家だ。農家出身の勇者なのである。そもそも、この平穏な村はほとんどの家が農家である。教会や雑貨屋くらいが例外か。

「うし! うしみたい!」

「うし! もーってなくってほんとですか!?」

 双子はなんだか牛と聞いて興味津々だ。そう言えば、旅の間も牛は目撃していない。

「にーちゃんちいこう!! うしみたい!」

「うしみたいです! もーってなくのみたいです!」

「え。いいけど、別に大したことないと思うぞ?」

 生まれたときから牛飼い農家のユーヤにとっては、牛は珍しいものではない。双子が面白がる理由がよく分からないが、楽しそうだからまぁいいかと思い直した。

「……それじゃあまぁ、実家に顔見せがてら子供たちに牛見せてきます」

「ああ、すまないな。それではこれからもよろしく頼む」

「はい。こちらこそ。じゃあ、じいちゃん、ばあちゃん、また後で」

「ええ。気を付けていってらっしゃい」

「ああ。息子夫婦によろしくな」


 とりあえず、牛を見に行こう。

 双子と手をつないで、ユーヤは祖父母宅を後にした。


 女性陣がまだなにか話し合っているのは、そっとしておいたほうが良さそうだと直感して。

 凍り付いている元魔王は無視。ぽちは復活したら勝手についてくるだろうから、これまた無視である。


うしを見に行く。そして女性陣のサークルが怖い。何話してんの? 何話してんの!?

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