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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
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子育て勇者と魔王の子供・55

「師匠と呼ばせてください!」


 もと まおう が どげざ している!


 こまんど?

 >するー


 ユーヤは しかと した!


「無視するな勇者ぁあああ!」

「いや、したくもなるだろ。なんだ師匠って」

 祖父母のお隣さん、元魔王夫婦が双子の顔を見に来た。それは良い。今までのことも話したいし、いろいろと言いたいこともあったし、これからのことも話したい。

 が、家に入ってくるなりユーヤの周囲を見て、元魔王はいきなり叫んで頭を床にこすり付けたのだ。

 意味が分からない。そう思うユーヤに、元魔王は叫んだ。


「師匠だろ! なんだそのハーレム! 女の子だらけじゃないか! ハーレムを作るには魔王じゃ駄目なのか勇者になればいいのかよし分かった魔王を倒しに行けばいいんだな!?」


 お前が魔王だろ。


 内心で全力で突っ込んだ。行動には出していない。元魔王の嫁が即座にしばき倒したからである。

「……すまんな。莫迦が馬鹿で」

「……えーっと、いえ、いいんですが……ハーレムって何を見て言っているのかよく分からない」

 ユーヤは正直に呟いた。今、確かに女性比率は高い。

 昔の旅仲間であるオーラ、面倒を見る羽目になった魔王の子供イリア、イトコのネィナと、幼なじみのミリーナに、なんでか村長の娘であるスーリア。あとは祖母と隣の奥さんか。

 女性の比率は高いが、隣近所の知り合いがたまたま来ているだけである。ユーヤが子供を連れて帰ってきたのが話題になったのだろう。知れ渡るのが異常に早いが、別に珍しいことなどしているつもりもない。そもそも、連れているのは祖父母家の隣家の子だ。

「なんだその生きるフラグは。ツンデレイトコに、おとなしい幼なじみに、わがまま村長の娘に、しっかりものの賢者の卵ときて魔王の娘だぞ。なんだそのフラグ乱立は!」

 嫁に殴り倒された元魔王が勢いよく起き上る。

「しかも全員美少女ときた!! ひとり美幼女だが! なんだそのハーレム夢のようだぞ! 譲れ!」

 即座に嫁にまた一撃されて、なんだかよく分からないことをわめいている元魔王は床に沈む。

「……すまんな。阿呆がアホウで」

「……えーっと。いえ、いいんですが……一体なんのことやら」

 ユーヤにはわけが分からない。

 知り合いは確かに結構な美人揃いなような気がするが、あくまでも知り合いであり、それ以上ではない。


「うむ。付き合うだけ疲れるから、相手をしなくてもいい。頭のおかしい男は放っておいて、子供たちが世話になった。ありがとう。すまないな。苦労しただろう」

「え、いえ。二人ともとても良い子でしたから。お手伝いもたくさんしてくれましたし。魔王の子とはとてもおもえないくらいに良い子たちですよ」

 真顔で頭を下げてきた奥さん=死の化身に、ユーヤはあわてた。元魔王がいい加減だったので、奥さんもいい加減な人なのではと思っていたのだが、普通に真人間だ。一度死にかけたときの言動を思い返すと結構な変な人だった気もしたが、今目の前にすると、普通だ。

 良識のある存在だと感じた。非常識な死の化身など考えたくもないが。

「おかーさん、おひさしぶりです!」

「かーちゃん! おれたちげんきにいいこにしてた!」

「うむ。良い人に面倒を見てもらったのだね。お礼を言いなさい」

「にーちゃんありがとう!」

「おにーさんありがとうございます!」

 元気いっぱい言ってくる双子に和む。頭を撫でてやって、ふと、思い出した。

「いやいや、俺はたいしたことはしてないから。あ、そうだ。子供たちの養育費にって、おたから預かったんですが、お返しします」

 換金してしまった額と、まだ換金していないおたからを奥さんに返そうとしたときだった。

 床に倒れていた元魔王が跳ね起きた。


「ハーレムもフラグも立て方が分からんっ!! 師匠! フラグを乱立させる手段を教えてくれなさいコノヤロウっ!!」

「意味わからん」

「美少女とフラグぅうううう!!」

「おとーさんうるさいです。ねつがあるですね、きっとそうですね。ひやしたほうがいいですねわかります」

 イリアのつぶやきと同時、元魔王が凍りついた。

「とーちゃん、うるせー。そとであたまひやしてきたらいいとおもう」

 イリックのつぶやきと同時、氷の塊となった元魔王が突風に室外に吹き飛ばされて見えなくなった。

 ついでなのか、ぽちも一緒に見えなくなったのはどうでもいい。

「なんなんだ、フラグとかって。一体何がしたいんだ……」

 元魔王の考えていることは分からない。

 女性の知り合いがそんなに羨ましいのだろうか。

 ユーヤは視線を向ける。


 幼なじみと村長の娘が訪れた先ほどから、円陣を組んでなにやら相談している女性たち。

 目が、怖い。

 何を話しているのか、知らないほうが良さそうだ。

「……とりあえず、子供たちの話をしたいので、お茶でもいかがですか」

「うむ、ありがたくお呼ばれしよう」

 死の化身である双子の母親は、それはもう美しい微笑みでユーヤの誘いに応じた。


「人妻……フラグ……まで……立てるとは……し、師匠おそるべし……! ぐふっ」

「少し黙ったほうがよろしいのではありませんか魔王様ぐふっ」


 へんじがない。ただのまおうとぽちのようだ。


もと魔王、懲りてない。

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