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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
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子育て勇者と魔王の子供・53

 祖父の知り合いに、まばゆい光を放つアイテムを向けられて、気が付いたら目の前に祖父母が立っていました、まる。

 ……自分が故郷まで転移させられたと気が付いたのは、左右に旅のツレが揃って現れてからであった。


 なんでこうなった。そんな心境である。


 祖父が入れてくれたお茶を飲みながら、互いの今までの話をして、ある程度の把握もできた。

 祖父母の隣人であり友人が魔王夫婦であったこと。もともと病弱な魔族で、夫婦げんかで奥さんが実家に戻った時、魔力だけは豊富だったためにこれ幸いと大魔王とやらに目を付けられ、「ハーレムほしいだろ?」と言いくるめられた上に取りつかれて魔王化。

 世界征服に乗り出して、ハーレムじゃうはははといい気になったところで病死。大魔王の魂と分化して冥界に行ったら奥さんにシバかれ、反省したのでまぁいいかと奥さんが職権乱用。生き返ってまた隣に戻ってきたとのこと。

 もちろん、魔王ではなく普通(?)の魔族として。

 そこまで聞いて、ユーヤは待った、と、祖父母の話を遮った。

「じいちゃん、ばあちゃん。ちょっとごめん。隣行ってもと魔王殴ってきていいかな」

「気持ちは分かるが、奥さんにいいだけ殴られて反省したそうだから許してやりなさい」

 と、祖父。

「しばらく戻ってきたあいさつ回りもできないくらいに顔面腫れていたからなぁ。このまま冥界に逆戻りするんじゃないかと思ったよ」

 どんだけ奥さんにシバかれたんだ、もと魔王。

「昨日まで熱出して寝込んでいたそうだから、殴るのは加減を知っている奥さんに任せておけ」

 また寝込んでいるのか、もと魔王。そして寝込んでいるからといって容赦しない奥さんマジ死の化身。

「とーちゃんあいかわらずよわいなぁ」

「そうですね。よわいです」

 と、双子は父親の生存を聞いてもドライだ。会いたいと隣に走って行くこともなく、お行儀よくユーヤの左右に座って甘いお茶を飲んでいる。

 オーラはまだ混乱しているのか、何も話さずおとなしい。

 家に入る前には祖母を指してどちら様? と、どこかおっかない笑顔で聞いてきたのに、実の祖母と答えたらそのまま固まった。確かに祖母は年相応には見えない。ユーヤと姉と弟くらいにしか見えないが、れっきとした実の祖母だ。


 初対面の相手にはどう話しても、たいてい信じてもらえない。


 まぁ、どうひっくり返しても孫がいる女性には見えないのだからしょうがないだろう。祖母の母、曾祖母はもっとすごい。ひ孫がいるようにはとても見えない女性である。曽祖父もひ孫がいる年齢には見えないくらいに若々しい。そんな曾祖父母の血を引いているのだから、祖母も若々しいのだろう。大叔父だって若く見える。きっとそういう家系なのだ。ユーヤはそれで納得している。


 祖父の入れてくれた茶でのどを潤し、ユーヤは口を開いた。

「ええと……この子らの父親がじいちゃんたちの友達ってことは分かったよ。もともと悪い魔族じゃないって言うのも分かった。今は落ち着いて隣に住んでるってことも理解した。でも、その大魔王だかってやつを倒さないといけないだろ? 放っておいたら第二の魔王が現れる可能性が」

「ああ。それも心配要らない。今頃は隣の奥さんに連行されているだろう」

 いともあっけなく祖父が断言する。

「……え、本当に?」

「じいちゃんを疑うか?」

「いやそんなつもりはないよ。でも、どこにいるのかも分からない大魔王をどうやって」

 双子が元気いっぱい手を挙げた。

「にーちゃん、だいまおうとかいうやつ、おれとイリアにくっついてたよ!」

 まさしく爆弾発言である。

「なにぃ!?」

「まいにちうるさかったです。じゅうりんしてほしいってしつこかったのでするーしてました。きづいてたのわたしとイリックだけです。ぽちにもみえませんでした」

 双子にくっ憑いていたらしい。今更ながらに愕然とするユーヤだ。

「まおうになれっていわれたけど、おれ、じぶんのちからでまおうになりたいし、うざいからほっといた」

「ぽちなみにへんたいのけはいがしました。なのでわたしもイリックもするーしました」

「そ、んな変態が……傍にいたのか……」

 気配に気づかず、ヘタをしたら双子が餌食になっていたのかもしれない。思うと冷や汗が流れた。双子が相手にしなくて幸いだったのだ。


「ごめんな、二人とも……俺がもっとしっかりしてたら気付けたのに」

「おにーさんのせいじゃありません。あれはまりょくがつよくないとみえないみたいでしたから」

「にーちゃんはわるくないよ? どっちにしてもおれもイリアもあいてにしてなかったもん」

 肩を落とすユーヤに、双子があわてている。護るべき子供たちにかばわれて、さらに立つ瀬がない。

 落ち込むユーヤに、祖母が微笑みかけた。

「あなたと子供たちが無事で良かったわ。今はそれだけで十分よ。大魔王の件は忘れて良いと思うわ」

「ま、それは魔族がわの事情だからな。むこうが責任もってなんとかするって言っていたから、任せておきなさい。メンツもあるから」

 と、祖父。メンツ。魔族の。

 ……放っておいていいのだろうか、ソレ。

 判断に困って、ユーヤはもう一度お茶に口を付けた。


 しかし……魔王が祖父母のお隣さんって……世界って狭いなぁ……。


狭いね(笑)

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