子育て勇者と魔王の子供・6
やっぱり野宿になった。
子供連れなので距離をゆけないのは仕方ない。勇者ユーヤは、初めての野宿に喜ぶ魔王の子供たちを見て苦笑した。
「にーちゃん、のじゅくってどうやるんだ?」
「別にたいしたことはしないよ。火を焚いて、寒くないように毛布に包まって、魔物に気をつけて寝るだけだから」
「そーなのか? つまんねー」
一体何を期待していたのだろう。枕投げか? 枕がないので無理である。
「つまらなくていいんだよ。普通に寝るだけ。さ、薪を集めて火を起こすぞ」
途端、双子は木切れを拾いに走り出した。集めるのが楽しいらしい。魔王城でどんな生活を送っていたのか。病死した魔王が復活したら、その辺り詳しく問い質したい。復活するかどうかは謎だけれども。
万が一、復活したら、即座にぶん殴る。なにはなくとも、殴る。それだけは決めていた。
「おにいさん、ちょっとだけくっついていいですか」
夜が更けてくると、イリックと一緒に毛布にくるまっていたイリアが言い出した。
「? どうした?」
「……ちょっと、こわいです。おしろからでたことないから、おそと、こわいです。まものはこわくないです。でも、しらないことばかりで、おそとがこわいです」
困った表情で言ってくる。
「おれもこわい」
イリックが毛布の中から顔を出した。
「にーちゃん、そっちいっていい?」
魔王の子供でもやはり子供なのだろう。
「いいよ。二人ともおいで」
可愛いなぁとユーヤは双子を呼び寄せ、同じ毛布に包まった。魔王の子供はユーヤの体にしがみつき、周囲を見ている。夜の暗闇が怖いのだろう。
「大丈夫。俺が護るから」
「……にーちゃん、ゆうしゃだもんな」
「おにいさん、ゆうしゃです」
「そうだよ。だから、君達も護るよ」
「えへへ、ありがとな」
「ありがとうです、おにいさん」
……深夜。寝息を立てている三人に近寄る影。気配に気がついてユーヤは目を覚ます。双子からそっと身を離し、密かに剣を握り……だが、剣が抜かれることはなかった。
気配が消失したからだ。
「??」
何が起きたのか探ろうかと思ったが、双子がもぞもぞと服を握ってきたので苦笑して諦めた。
おや、何か来た(他人事のように・笑)