子育て勇者と魔王の子供・52
PVやユニーク、お気に入りが未知の世界に……!?(驚愕)
読んでくださるみなさま、本当にありがとうございます。
ものすごく深いため息をつかれました。
目の前にいるのは大神官。神殿の一番偉い人である。
一人で訪れたユーヤに、神殿で一番偉い人が出迎えて……ため息をついた。
「あ、あの」
何の用で呼び出したのか、問う前に、大神官がユーヤを見た。
「手紙、読みましたね? 内容は理解していますね? だから神殿を訪れたのでしょう?」
「は、はい……」
何か怖い。こちらの心のせいなのだろうか。魔王の子供を預かって育てている。そのこと自体は恥じ入ることではないとユーヤは心底から思っている。双子はまだ子供。これからの育て方で真人間……真魔物になるだろうと信じている。
「お連れのかたと一緒に、と、書いてありましたでしょう?」
「は、い」
ノドがひきつる。ある意味、王への報告より緊張していた。精神的に、魔王城に突入するほうがラクな気さえしている。
迂闊な言葉は口に出せない。双子のこれからのためにも。
――いざとなれば、反逆者の汚名を着てでも、逃げ出す。誰も怪我をさせず、たとえ自分がどれほどの重傷を負っても……双子を護る。
魔王城を出てから何度目の覚悟か。ユーヤは迷わない。
「まぁいいです。ええ。立場上、ある意味で警戒されていることくらいは予想していましたから」
が、大神官はあっさりと納得したようだった。ユーヤを見る目も、仕方ないなぁこの子は、と言いたげだ。やんちゃな孫を見る祖父のような目である。見たことがあった。
ユーヤの実の祖父が、ユーヤを見るときと同じ目をしている。
困った子だ、でも可愛くてしょーがない、と言いたげな。
「? ?」
あれひょっとしてこの人敵じゃないんだろうか。いやいやまだそう判断するのは早いだろ。だって大神官だぞ、神に仕える人だぞ。神殿で一番偉い人なんだ。魔王の敵じゃないか。いやそれを言うなら俺もそうだけど。魔王を倒すために勇者になったんだから俺こそ魔王の天敵だけども。いやそうじゃないだろ。これは一体どういうことなんだ??
混乱するユーヤに、大神官は苦笑い。
「ひょっとして、おじさんのこと思い出してませんね?」
「え」
「小さいころ遊んであげたこともありますよ」
「ええ!?」
「わたしは君のおじいさんの元仲間です。たまに遊びにも行ってますよ。まぁ、最近はいろいろと忙しくて遠話のアイテムでしか話してませんが」
「あ、え? えええええ?!」
神殿で一番偉い人が、祖父の元仲間!?
「あ……あああああー!」
思わず指をさしてしまう。大変に失礼なことなのだけれども、体が勝手に動いた。
えらそうな神官服(実際偉い人なのだから当たり前)を着ていたから分からなかったけれども、幼少時によく祖父のところで茶を飲んでいたおじさんだ。
神殿に来る直前に思い出していた相手である。
「じーちゃんの茶飲み友達の神官のおじさん!?」
「ああ、ようやく思い出してくれましたか。城の中で顔を見てもちっとも気付いてもらえないので、心の底から忘れられているのだと、ちょっと落ち込んでいたのですけれども」
「す、すみませんっ! 今思い出しました!!」
赤面するユーヤだ。
思い切り知り合いだった。
「神官服だったから分からなくて……っ」
「これ偉そうですからねぇ。あんまり着たくないのですよ。似合わないでしょう。わたしはもっとこう、地味に堅実な服でいいと思うんですけどねぇ。大神官が地味な服着てどうします威厳がないでしょうって怒られるんですよ、信者さんたちに」
うん、変わってない。ユーヤは確信した。確実に祖父の茶飲み友達だ。いつものほほ~んと祖父と茶を飲んでいたあのおじさんだ。
農家のおじさんみたいな普通の服着て、のんびりまったり祖父母と話をしていたあの人だ。
「色彩の女神や虹の神ならともかく、実りの女神の神官が派手にしてどうすると思うのですがねぇ。世間体と言うものがありまして。面倒ですがしょうがないのですよ」
「は、はぁ……」
「ああ、話が逸れましたね」
「え、あ、はい」
こほんと咳払いをして、大神官は言い切った。
「単刀直入に言います」
「は、い」
本題だ。
自然と体に力が入る。大神官は確かに知り合いだ。だが、味方とは限らない……。
「みんなで田舎に帰りなさい」
「え」
だいじょうぶ、敵じゃない。しかしこの話本当にぐっだぐだですね(笑)




