子育て勇者と魔王の子供・49.5
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ばたばたばたばた。走っていく彼らを、登城していた大神官はほのぼのした苦笑を浮かべて見送った。
「ああ、全く落ち着きのない……本当にソックリですね」
小さくつぶやく声が、誰かに拾われることもない。
勇者と呼ばれる青年の両腕に抱えられている双子。その正体にも大神官は気付いている。
小さな双子。魔王の子供。
子供たちの頭上に漂う暗雲のような気配にも、大神官は気付いている。
田舎に引っ込んでいる仲間に伝えるべきだろうか。おそらく孫の身を心配しているはずだ。
彼らの孫が魔王討伐に旅立ったと知った時、さすがは彼らの孫だと思った。困っている人々を見捨てることができず、助けようと思うのは確かに彼と彼女の血を引いていると思う。
一直線に魔王を倒しに行くと思う単純さは、確実に彼のほうの血だ。
そして、いろいろな仲間たちと出会って、たくさんの力を借りながら魔王の城までたどり着いたのも、間違いなく彼の血筋。
魔王の子供たちがなついているのも、彼と彼女の血筋だと分かっているから、だろう。
彼も、彼女も、あたたかい人柄の持ち主で、見捨てない強さと優しさの持ち主でもある。そんな彼らの孫だから、あの勇者も双子になつかれているのだと、大神官は知っている。
ほのぼのと見送っている大神官の目の前を、獲物を探している肉食獣の目をして姫が通り過ぎた。
怖い。
「早く逃がしたほうが良いかもしれませんねぇ……」
遠い目でつぶやいた。
とりあえず、ちょこちょこ王立研究院に顔を出す仲間に相談しようと思う。
勇者の連れの少女と顔見知りになっている仲間の魔術師なら、いい考えもありそうだ。
勇者たちを城から出すために、盗賊ギルドの長になっている仲間にもアドバイスをもらおうか。
ああ、まず何よりも、彼と彼女に連絡をしないと。
大神官は微笑みを浮かべて、王立研究院のほうへと足を向けた。
彼女は今日も登城しているはず。顧問魔術師は忙しいのだ――王都の大神官となった自分と同じように、多忙の身。
それでも、彼と彼女とその孫のためには尽力を惜しまない。
さて、遠話のアイテムでも貸してもらおう。
久しぶりに、彼と彼女といろんな話もしたい。
きっと、長い話になる――何よりも楽しい話に。
ここいらで、こちらも「女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と」とリンクし始めました。向こうを読まなくても大丈夫なように気を付けます(笑)




