子育て勇者と魔王の子供・47
まずいと、思っている。
日を過ごすにつれ、姫のイリックへのアタックと、美熟女の養子によこせ攻撃が激しくなってきているのだ。
魔王城の調査もかなり進み、魔王の死はほぼ確実ムードになってきているので、実質ユーヤの仕事も終わっていると思っていい。
したがって、暇になりつつある。そんなユーヤは今日もイリックとイリアを連れて、姫と美熟女から逃げていた。
一度、王様に相談したが、王は遠い目で「娘はのぉ……あれはもう、ほれ、なんだ、アレじゃからな……」とか呟き、美熟女に関しては嫁さんノロケにしかならなかった。
だめだこの国なんて思ってないぞ俺は。王様はいい人じゃないかちょっといろいろアレだけど。心の中で思いながら城の端っこの廊下にまで逃げ、一瞬実家に帰ろうかなとも思ったが、帰ったら帰ったで大変なことになるだろう。
何せ連れているのが魔王の子供。迫害されるとまでは思わないが、思いっきり構われ倒すだろう。
ユーヤの祖父母や両親家族は寛容だが、その上の曾祖父母がいろんな意味で怖い。
凄腕の魔法使いなので、実験台にとか言われそうだ。それは避けたい。
「……やっぱ、夜逃げかな……」
いろいろ後が怖いが、とりあえずの(双子の)安全を確保するためには逃げ出すのが一番かもしれないと、ユーヤは思いつめていた。
「にげるですか、おにーさん?」
あどけない表情でイリアが見上げてくる。
「よにげ! すげー! おれやったことない!」
なぜか嬉しそうなイリックである。
「うん。やったことあったらちょっと切なくなるな」
魔王の子供に夜逃げ経験があったら。、何か違った意味で怖い。
「たのしそうです。どうやってにげるですか?」
イリアもわくわくしているようだ。彼女も美熟女の「養子になってくださいませ」攻撃にあきれていたので、ようやく相手にしなくていいと気分が高揚したのかもしれない。
「そうだなぁ……とにかく、いろいろ考えないといけないな」
何せここはお城である。警備体制もそれはもう厳戒なのだ。
魔王の城を一人で突破したユーヤなら強行突破も不可能ではないが、そっちの意味でお尋ね者になるのはごめんである。
したがって、穏便に、どうにかかこうにか抜け出したい。
「……抜け道とかないかな」
王族専用の脱出通路とかないものだろうか。
あってほしい。そこからこっそり脱出したい。
とにかく、ユーヤは疲れていた。
お疲れモードの勇者がんばれー(棒読み)




