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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
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子育て勇者と魔王の子供・46

 お城に滞在して、一月。やばい、と、ユーヤは思い始めた。

 王と結婚した美熟女が、権力を得てしまった。

 まぁ、それはいい。政治は真っ当に行ってくれているから、そっちは良しとしよう。

 問題は、権力を盾にすることだった。


「至極真っ当な要求でしょう?」

 にこやかに、今は王妃となった淫魔・シヴィーラが言う。

「あなたは独身。私は既婚。そして子育てをするだけの権力も財力もあって、結婚相手は魔物でも構わないと言ってくれるほど心の広い王様。何の心配も要らないわ」 

 ユーヤに対してこれでもかといわんばかりに押してくる。


 ……魔王の双子を養子に寄越せ、と。


「あなたねぇ……! 確かにユーヤさんは彼女いない歴=年齢で、子育てなんてしたことない人だけど、それでも双子ちゃんはユーヤさんになついているのよ!? 大体、あっさりとお金持ちに乗り換えた尻軽女に子育てができると思うの!?」

 賢者の卵・オーラの反撃。こっそりユーヤは傷ついた。どうせ彼女いないよ。悪かったな。

「それにね、ユーヤさんには将来があるの! これから結婚して幸せな家庭を築く可能性が高いの! だから双子ちゃんたちを育てる権利というか未来への可能性はあるわ!」

 ちょこちょことユーヤを見ながら叫ぶオーラだ。多分、いろんなものがその視線には含まれているはずだったが、ユーヤはやっぱり気付かない。

「いや、別にほら、独身でも子供がいちゃ駄目って事はないだろ。今は彼女もいないけど、これから先俺にだって相手ができる可能性だってある。オーラだってそう言ってくれたし」

 ぱっとオーラの表情が輝いた。双子がムッとし……続いてのユーヤの言葉に笑顔になった。

「まぁ、なんだってこれからだ。俺もまだ若い。結婚とかより、今はこの子達のことをきちんと面倒みないと。シヴィーラさん、あなただって王様と結婚したばかりだ。いろいろと慣れなきゃいけないこともあるだろう? 魔王のことだってまだ調査中。王様も養子なんて話はできないはずだ」

 オーラががっくりと肩を落とした。(判ってたじゃないこういう人なのよ……やっぱりハッキリ伝えるかそれっぽく行動しないと駄目……? ああもう……)なにやら呟いているがユーヤには聞き取れない。

「ああ、そっちは大丈夫よ?」

 美熟女も賢者の卵をまるっと無視して話を続けた。

「娘も賛成してくれているもの」

 ユーヤは一瞬固まった。

 シヴィーラの娘。王様の子供。王女。姫。

 ……イリックに懸想している、ショタコン。


「全力でお断りさせていただきます」

 頷いたらイリックが危うい。いろんな意味で。

 子供はユーヤの足にしがみついている。二人揃って上目遣いで見上げてきた。不安げなまなざしに、父性心が刺激される。

 護らなければ。

 何一つ悪いことはしていないが、夜逃げを考えるべきだろうか。

 このまま城に滞在していると、イリックが危険な気がしてきた。

 姫はまだまだ諦めておらず、あの手この手でイリックを婿にしようとしているようだ。

 あげく、養子にして義理の姉弟になって逃がさないようにと思っているのか。

 怖い。義理でも姉と弟なら結婚などできないだろうに。

「意固地ね。そういうところも好きだったわ。でも、わたしにはもう愛しい夫がいるの。そして、可愛い子供が欲しいのよねうふふふふ」

 何か別世界を見ているシヴィーラの言葉に、ユーヤは咄嗟に双子を両腕に抱き上げた。

「そのお話はなかったことに! ではこれで!! 部屋でこの子達に文字を教えたいので!!」

 脱兎の如く、その場を離れた。


「おにーさんがあいかわらずであんしんしました。あんしんのするーりょくです」

「にーちゃんはすげーな。そのままいろんなことをするーしてほしいおれたち」

「? 何のことだか分からないけど、二人のことは俺が護るからな!」

 双子は信頼を瞳に浮かべて断言した。

「はい。しんらいしてます。おとーさんよりしんじてます」

「おう! とーちゃんよりしんじてるぜにーちゃん! あのおひめさまこわいからおれちかよりたくないもん!」

 魔王の扱いがなんだかいろいろ酷い気がするが、今はそれよりも。

「……だよな……やっぱり夜逃げするべきか……?」

 不穏な呟きを聞きつけ、イリアが嬉しそうに笑う。

「いいですね! ぜひぽち『だけ』つれていってにげましょう!」

「だな! ぼち『だけ』でいいから!」

 何故『だけ』を強調するのか。ぽちがうまやに入れられているのが寂しいのだろうかとユーヤは思った。普段ぞんざいに扱っていても、やっぱり情が湧いたんだな、と、好意的に考える。

 とりあえず、子供たちも城から逃げ出したいようだ。


遠まわしにオーラを置いて行けと言っている双子(笑)

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