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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
46/117

子育て勇者と魔王の子供・44

 結局、しばらく城で暮らすことになって、一日目。

 大変なことになった。

「まぁ……まぁ! そこの少年!! わたくしの婿になりなさい!!」

 王女様が、イリックに目をつけたのである。

 

 目が点になったユーヤである。王に結婚を打診された王女が、まさかもしや。

「王女殿下……あの、この子はその、見たまま、まだまだ子供で」

「分かっております!」

 断言する王女の目は、野獣のようだった。育ちの良いお姫様なのに、獲物を見つけた狩人のように、鋭い目。怖い。

「あのぅ、申し訳ありませんが、この子は」

「そなた保護者ですか? 王家の婿となればこれ以上ない良縁! よもや断るなどという真似はしませんでしょ!?」

「いえ、お断りします」

 即答したユーヤに、王女はしばし硬直し、それから鬼気迫る形相で睨みつけてきた。魔王直属の四天王より怖いかも、と、ちょっと思ったユーヤである。

「大体、年の差がありすぎるでしょう」

 王女はユーヤと年のころが近い。イリックとは十以上離れているだろう。

「だから良いのでしょう! まだ年端も行かぬ少年を導くのが!!」

 断言された。目が本気である。

 薄々感じていたことが、核心に近付いていく。

「王女殿下……年下趣味ですか……」

 ちょっと言葉をぼかしたが、意味は通じたらしい。王女は握りこぶしでこう答えたからだ。

「違います! これは純然たる先物買いです!」

 いや青田買いだろう。しかもちょっとどころではなくまずい域の。

 王がユーヤに王女との縁談を進めたのは、もしかして娘がまずいことをしでかす前にストッパー役を見つけたかったのではと、思った。


「ねえちゃん、おれ、むこにはなれないんだ」

 王女の勢いに、ユーヤの腰の後ろに隠れていたイリックがひょこっと顔を出す。その仕草に胸を打ちぬかれたのか、王女は身悶えた。怖い。

「まぁ、何故? わたくし、良い妻ですわよ?」

 自分で言いきった。さらに怖い。

「おれ、まおうになるから!」

 イリックは言い切った。固まるユーヤだ。双子が魔王の子供という真実は、無論のこと内密にしてある。魔物の子供ということすら言っていない。ぽちだけは魔物だといってあるが、あれはどうでもいい。

「まぁ……!」

「まおうになって、せかいせいふ」

「こらこらこら!!」

 あわててイリックの口を塞ぎ、背筋に冷や汗を感じながら王女に視線をやる。

「まぁ……」

 なぜか王女はうっとりしていた。

「こ、子供の言うことです、お気になさらず!!」

 イリックとイリアを抱え、ユーヤは全速であてがわれた部屋に走った。後ろをオーラがあわててついてくる気配。

「ちょっと、イリックくん! なんてことを言うの!?」

「だってあのねえちゃん、めがこわいし、なんかくわれそう」

「それはそうかもしれないけど、言って良いことと悪いことが――ユーヤさん足速いぃ……」

 オーラの声が徐々に遠くなっていくので、ユーヤはあわてて足を止めた。


「おにーさん、とまっちゃだめです。おいつかれます」

「えっ!?」

 王女が追いかけてきたのかと思ったが、そうではないようだ。

「おねえさんをおいていくちゃんすです」

「いや……オーラを置いていってどうするんだ。というか、同じお城なんだから置いていく意味がないよ」

 少しして、思い切り息を乱したオーラが追いついた。声も出ないようだ。

「しずかでいいです。おにーさん、もういっかいはしってほしいです」

「にーちゃんはしってー。へやまでだっこー」

「えー? うーん。オーラがもうちょっと回復したらな」

「ち」

「ち」

「……ぜーはー……ぜー……(何か言いたいらしいが声が出ないようだ)」


青田買い(意味違う)なお姫様。フラグぼっきりですな(笑)

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