子育て勇者と魔王の子供・40
医者を頼み、子供たちの飴玉を買いに来た先で、兵士に出会った。
もと同僚の彼らは、ユーヤを探していたという。
「え、なんで?」
「なんでもなにも、お前魔王の城まで行ったんだろ? この間、斥候が魔王の城にまで行けたって大騒ぎになったんだ。で、王がお前に話を聞きたいって」
「いやー、見つかってよかった。どこ行ったか分からないから、近隣の街しらみつぶしに兵が出てんだよ」
かなりの人数が、ユーヤを探していたようである。
「なんかすごい大事になってないか?」
どうしてそんな話になっているのだろう。王には報告したので、義務は果たしているはず。たとえ信じてもらえなくとも。
「おおごとだよ。魔王の姿も見えなかったらしいし、魔物の動きもウソのように穏やかだ。なぁ、魔王は本当に死んだのか?」
「死んだと思う」
兵士Aの言葉にユーヤは苦笑い。以前オーラに言われたことが頭によぎったのだ。
魔王は本当に死んだのか、と。
「まぁ、でも、俺も確認したわけじゃないからなぁ……埋葬してきたわけじゃないし……一応、寝室らしいところに寝かせてきたけど」
子供たちの手前、遺体を放置しておくこともできず、とりあえず双子に聞いて魔王の私室である部屋に遺体を置いてきた。が、心音などまで確認してきたわけではない。もっとも、あの後妻らしき存在の声を聞いているので、魔王は確実に死んだのだろうと思う。
奥さんが死の化身だということは、他言すべきではないとも、思う。
「じゃあ、やっぱりお前が倒したのか?」
「いや、病死。俺は何もしてない。玉座までたどり着いたら、もう瀕死だった」
「……本当か?」
「本当。王にもそう報告した」
子供を預かったとかそういうことは報告していない。というか、信じてもらえなかった。むしろユーヤの子供だと思われた。何故だ。
「うーむ……まぁともかく、一旦戻ってきてくれないか? 王ももう一度詳しい話を、とお望みだ」
「それはまぁやぶさかではないけれども……あ、駄目だ。連れが今寝込んでいる。すぐに出発するのは難しい」
と、説明すると。
「連れ? ああ、お前の子供? そりゃ大変だ。子供ってすぐ熱出したりするからなぁ」
「違うっ!」
否定すると、兵士Bが驚いた。
「あ、子供じゃなくて奥さんか! え、次の子供ができたのかっ!?」
「それも違うッ!!」
そもそも根本からして違う。オーラは妻ではなく、双子もユーヤの子供ではない。
この誤解から解かねばならないのか。頭痛がしてきた。
オーラのように寝こみたい気分だ。
「……とにかく、連れの女の子が寝込んでいるんだ。だから、もう少し時間の猶予をいただきたいと王に伝えてもらえないか? 彼女が回復したら必ず向かう」
「分かった。伝える。奥さん大事になー」
「だから違うって……」
寝込みたい。
「なんと。嫁が寝こんどるのか。そりゃ無理強いするわけにいかんの。嫁と子供は大事にせにゃならん。特に子供は宝じゃ。うむうむ。滋養のあるものを食わせてゆっくり養生させろと伝えろ。報告は急がんでいい。妊婦に無理をさせてはいかん」
すごい誤解をされつつ、まだ続く(笑)




