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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
32/117

子育て勇者と魔王の子供・32

 店はうす暗く、店主の人相は悪い。

 子供さらって売っちまうぞ、と、いうような雰囲気の店主である。

 そのくらいコワモテのおっさん店主は、双子を見るなり、破願した。

「かーわいいなー。ん? いくつだ、ぼうず、じょうちゃん?」

「おれ、よんさい!」

「わたしもよんさいです。ふたごなのです」

「そーかそーか、ふたごか! 可愛いなぁおい! 返事も上手じゃねえか。アメ食べるか? 何味がいい?」

 ……子供好きのようである。人間、見た目で判断できないものだ。

「あのー、アイテムの換金を頼みたいんだけど」

「おー。そのへんに置いとけや」

「いや、そういうわけにいかんだろ。見てくれよ」

 子供たちを構うことに気を取られている店主に苦笑しながら、道具を三点、カウンターに置いた。

 派手にキラキラしており、魔法的な効果もなく、金銭的に価値の高いものを選んである。

 双子にアメを渡して満足したのか、店主はカウンターに置かれた品に目をやり、器用に片眉を上げた。

「ほお。こりゃ値打ちモンだな。どうしたよ、若造。どっから盗んできた?」

 あきらかにユーヤに不釣合いな品物だと思われている。確かにそのとおりだ。

 もとは魔王の宝だったのだから。


「…………盗んだ……わけじゃ……ないような……」

 魔王の宝物庫からいただきました。どうも、子供たちの養育費だったようです――信じてもらえると思えない。

「……とりあえず、官憲に連絡していいか?」

「だだだ、駄目です! ユーヤさんもどうしてそこでいきなり弱気になるんですか!?」

 オーラがあわてて制止してきた。アメを服のポケットにしまいこんだ双子が、くいくいと店主の袖を引く。

「ちがうよ、おっちゃん。これな、おれたちのとーちゃんが、にーちゃんに、おれたちのよういくひであげたんだ」

「せいかつひにしてくれっておとーさんがおにーさんにあげたのです。おとーさん、びょうきでしんじゃって、わたしたちをおにーさんにあずけたです」

 店主が黙り込んだ。さすがに怪しまれたのかと思った瞬間。

「そーかぁ、そうか……おまえら、父ちゃん死んじゃったのか……」

 だくだく泣き始めた。涙もろいようである。

「にいさん、おめえも若いのに大変だなぁ……こんな小せえ子供の面倒見なきゃならんとは……そうか、そうか……うんうん、分かった。分かったぞ」

 何か納得されたようだが、何を納得されたのか分からない。

 分からないまま、鑑定が終わるのを待つことにした。


「……いい人でしたね」

「うん、いい人だった……」

 店を後にして、ユーヤは一気にあたたかくなった経済状況に遠い目になる。

 店主はいい人だった。魔王のおたからが値打ち物だったことは確かだが、こちらの思った以上の価格をつけてくれたようだ。

 が、ユーヤとオーラを若夫婦と思い込んだのには参った。

 違うといっても信じてもらえず、双子に向かって「このにいさんとねえさんを親と思って頑張れよ」とかなんとか言い出したのには焦った。

 焦って反論するユーヤに、何故かオーラは半眼になり、双子はどうしてか満足そうだった。

 ちなみに、ぽちは宿で留守番。しつけの行き届いたペットという名目で街に入れたが、街中をウロウロさせないようにと注意されたからである。ぽちからの文句は黙殺した。

「にーちゃん、うまいもんくえる?」

「ああ、食べられるぞ」

「おやさいがたべたいです」

「おれ、にくー」

 機嫌の良い双子に両手を引かれながら、宿への道を歩く。

「……あんなに必死に否定しなくても……」

 オーラが何か呟いていたが、よく聞こえなかった。


ふらぐをへし折りつつ、話は進みます(笑)

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