子育て勇者と魔王の子供・29
疑問が湧いたら解明せずには要られないのが賢者のサガ。
卵であるオーラもそのサガを持っていた。
「……ねぇ、イリックくん? 君のお父さんとお母さん、どうやって結婚したの?」
死の化身である母親と、病弱な魔王。発端は分かる。魔王が死にかけたからと、両親の愛の結晶である双子は言った。
が、お付き合いを続けるのはどうやったのか。
冥界にいるという母親が、どうやって父親との仲を深め、どうやって双子を産んだのか。
遠距離恋愛にもほどがあるのではなかろうか。
「よくしらねー」
イリックはあっさりと言い切った。どうもオーラにまだ警戒心を持っているらしく、イマイチなついていない。双子のイリアも同様だ。
「イリアもイリックもお母さんの気配を感じ取ったんだよな? お母さんのことは覚えてるのかい?」
ユーヤも気になっている。あの魔王と連れ添った女性。
気になるのは、どうして子供たちを置いていったのか。子供たちが冥界ではなく、この世界に生きているのなら、母親もこの世界にいたということだろう。
可愛い盛りの子供たちを置いて、なぜ去ったのか。
「あんまりおぼえてねー。でもかーちゃんすき。いいにおいしてたから。とーちゃんあせくさかったし」
「あんまりおぼえてません。でもおかーさんはすきです。あったかかったきがします。おとーさんはいっつもねつがあってあつかったので」
……踏んだり蹴ったりだ、魔王。
「いつも熱出してたのかあの魔王……どんだけ虚弱なんだ……そんなんでよく魔王やれたな……」
しょっちゅう病に倒れていたようなのに、世界征服したあかつきにはハーレムを作るのが夢。阿呆か。
「えーっと……あー、ぽち」
子供には聞きにくいので、ユーヤはぽちを呼び寄せた。
「ぬ。なんだ勇者。我輩に用事を頼みたいのなら3べん回って」
爆風が巻き起こった。ぽちが落ちてくるまで五秒ほど待ち、ユーヤは顔を寄せた。イリックは後で叱っておこう。
「あのな、お前、双子のお母さんがどうしてあの子等を置いていったのか、知ってるか?」
「ぬがぐぐ……ご母堂……? 少しは頭を使え勇者。ご母堂は死の化身。そうそう冥界を留守にするわけにもいかん」
「だからって……置いていかなくても。いつ死ぬか分からんような病弱ヘタレ魔王のところに」
「何気に酷いぞ貴様」
「ねぇイリアちゃん、寂しくなかった?」
「ぜんぜん。イリックがいるからさびしくないです。ひまなときはぽちみたいなまものをからかってあそんでましたから」
「……イリックくん、寂しくない?」
「ぜんぜん。イリアいるし。ひまなときはぽちみてーなまものをいじめてあそんでたからへいきだ!」
「……こんなに可愛い子供たちなのに、どうしてかしら……母性本能をちっとも刺激されないわ……さすが魔王の子供……」
オーラが遠い目で呟いていた。
うん、いろいろ大変だねキミタチ(他人事のように言う)




