子育て勇者と魔王の子供・28
毒消しも飲まずに目を開けたユーヤに、オーラは驚いたが、双子は満足げに笑っていた。
「……どうして笑っているのですか? ユーヤさんが死にかけたのに!」
オーラの言葉に、双子は笑って答えず、ユーヤの手を握ってきた。
「にーちゃん、かーちゃんにあっただろ?」
「おにーさん。おかーさんにきにいられたですね」
ユーヤはまばたきした。
意識朦朧としていたための、幻覚とか幻聴なのではと思っていたものは、どうやら現実だったようだ。
「……えー、もしかして、あれ、君達のお母さん?」
「うん! にーちゃん、やっぱりかーちゃんにあったんだ!」
「おかーさんのけはいがしました! おかーさんです!」
嬉しそうな双子の頭を撫でてやりながら、ユーヤはぽちに目をやった。こいつなら知っているだろうか。
双子に母親の事を聞いても「とおくにいる」「べっきょ」とかいう答えしか返ってこなかった。死にかけていた魔王に、母親のことを聞く時間などなかったし。
「ぽち? この子らの母親のこと知ってるか?」
お座りをしていたぽちは、ふんと鼻を鳴らして言ってきた。
「知らんのか貴様。王子と姫の保護者を名乗っておるというのに情けない」
「ごめん、知らない。教えてくれると助かります」
頭を下げると、ぽちはふんぞり返った。
「王子と姫のご母堂は、死を司る存在である! 死を司る存在であるから、冥界におられるのだ!」
ユーヤはまばたきした。
「……冥界?」
「そうだ!」
「……死を司る?」
「そうだ!」
ええと。声を思い出す。
折檻とかなんとか言っていたが、死を司る存在ならば、死んだ魔王の魂は冥界に行ったのかもしれない。そして、子供を置いて死んだ魔王を見た奥方は、どうするか。
うっかり死にかけたユーヤを、どうするか。
……背筋がぞわっとした。
「……えー、君達のお母さん、怖い?」
「しらねー」
「わかりません。でも、おとーさんはこわがってました」
……魔王。冥界でもういっぺん殺されて来い。
生き返ってきたら俺がもう一度倒してやる絶対。
冥界に片足を突っ込んでかろうじて見逃してもらった勇者は、固く誓った。
オーラがいぶかしげに呟く。
「死? 冥界? ……ねえ、あなたたちのお母さんって、お父さんの魔王とどうやって出会ったの……?」
オーラの言葉に、イリックは自信満々言い切った。
「とーちゃんがびょうきでしにかけたときに、かーちゃんにあったっていってた!」
魔王、何回病気で死にかけたんだ?
虚弱魔王と死の化身の嫁。おっかない。




