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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
28/117

子育て勇者と魔王の子供・28

 毒消しも飲まずに目を開けたユーヤに、オーラは驚いたが、双子は満足げに笑っていた。

「……どうして笑っているのですか? ユーヤさんが死にかけたのに!」

 オーラの言葉に、双子は笑って答えず、ユーヤの手を握ってきた。

「にーちゃん、かーちゃんにあっただろ?」

「おにーさん。おかーさんにきにいられたですね」

 ユーヤはまばたきした。

 意識朦朧いしきもうろうとしていたための、幻覚とか幻聴なのではと思っていたものは、どうやら現実だったようだ。

「……えー、もしかして、あれ、君達のお母さん?」

「うん! にーちゃん、やっぱりかーちゃんにあったんだ!」

「おかーさんのけはいがしました! おかーさんです!」

 嬉しそうな双子の頭を撫でてやりながら、ユーヤはぽちに目をやった。こいつなら知っているだろうか。

 双子に母親の事を聞いても「とおくにいる」「べっきょ」とかいう答えしか返ってこなかった。死にかけていた魔王に、母親のことを聞く時間などなかったし。

「ぽち? この子らの母親のこと知ってるか?」

 お座りをしていたぽちは、ふんと鼻を鳴らして言ってきた。

「知らんのか貴様。王子と姫の保護者を名乗っておるというのに情けない」

「ごめん、知らない。教えてくれると助かります」

 頭を下げると、ぽちはふんぞり返った。


「王子と姫のご母堂は、死を司る存在である! 死を司る存在であるから、冥界におられるのだ!」


 ユーヤはまばたきした。

「……冥界?」

「そうだ!」

「……死を司る?」

「そうだ!」

 ええと。声を思い出す。

 折檻とかなんとか言っていたが、死を司る存在ならば、死んだ魔王の魂は冥界に行ったのかもしれない。そして、子供を置いて死んだ魔王を見た奥方は、どうするか。

 うっかり死にかけたユーヤを、どうするか。

 

 ……背筋がぞわっとした。


「……えー、君達のお母さん、怖い?」

「しらねー」

「わかりません。でも、おとーさんはこわがってました」

 ……魔王。冥界でもういっぺん殺されて来い。

 生き返ってきたら俺がもう一度倒してやる絶対。

 冥界に片足を突っ込んでかろうじて見逃してもらった勇者は、固く誓った。

 オーラがいぶかしげに呟く。

「死? 冥界? ……ねえ、あなたたちのお母さんって、お父さんの魔王とどうやって出会ったの……?」

 オーラの言葉に、イリックは自信満々言い切った。

「とーちゃんがびょうきでしにかけたときに、かーちゃんにあったっていってた!」


 魔王、何回病気で死にかけたんだ?

虚弱魔王と死の化身の嫁。おっかない。

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