子育て勇者と魔王の子供・26
魔物に襲われた。
オーラと子供たちを庇いながら戦い、何とか退ける。
オーラは賢者見習いで、しかも魔法アイテム開発に長けているだけで、戦闘に関しては素人なのだ。
「ユーヤさん、怪我……!」
「あ、大丈夫大丈夫」
戦闘中、魔物の爪が腕を切り裂いてきたのだ。かなり豪快に血が出ている。
「ぽちみたいに回復能力がすごいとラクなんだけどな」
力なく笑う。ユーヤは勇者と呼ばれるような人間だが、魔法は不得手だ。軽い回復魔法くらいは使えるが、攻撃のほうはもっぱら剣を振り回している。
回復魔法で血を止めて、荷物から包帯を取り出そうとすると、イリアとイリックが手伝ってくれた。
オーラも薬草を取り出して貼り付けてくれる。
ちなみに、ぽちも戦っていて、魔物を蹴散らし、余裕たっぷりに尻尾を揺らして双子の横に座っている。自力で双子を奪還しようとしただけあって、実は結構強いようだ。
単に性格がヘタレなだけらしい。
「にーちゃん、いたい?」
「いたいですか?」
双子が心配そうに見上げてくるので、笑って頭を撫でてやった。怪我をしたほうの腕が上手く動かなかったけれど、誤魔化す。
「大丈夫大丈夫。メシ食って寝たら治る」
「ほんと?」
「ほんとですか?」
「うん。心配してくれてありがとう」
「情けないな勇者よ。そんなに惰弱で王子と姫を護れるのか貴様? ふん、やはり我輩が」
ぽちが埋まった。
「イリア? 後でごめんなさいしような?」
「……………………ごめんなさい」
すごく小声で棒読みだったし、苦虫を噛み潰したように納得がいかない表情だったけれども、まぁ、よしとしよう。
歩き出して、しばし。
視界が揺らいだ。
「あ……?」
まずい。毒持ちだったのかあの魔物。しかも、遅効性でじわじわと効いて来るような毒。
荷物から毒消しを。
思う前に膝から力が抜けた。
「にーちゃん!?」
「おにーさん!?」
双子の声が聞こえて――意識が落ちた。
ピンチ!




