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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
18/117

子育て勇者と魔王の子供・18

 ……遭遇、二匹目。

「ご子息とご息女を渡しなさい」

 今度は美女だ。なんというか、お見事なプロポーション。男なら一度はお付き合いしてみたいと願うくらいの美女。魔物というよりは、人間の厳しい教師のような印象なのだけれども。

 多分、眼鏡をかけているせいだろう。髪の毛もきちっと結い上げているし。見事な足をさらけ出しているミニスカートだけれども。胸の谷間も拝めているけれども

 なんだかどこか、叱られそうな印象で、色気よりは厳しさを感じさせた。

「……知り合い?」

 とりあえず、子供たちに聞いてみた。双子はそろって首を振った。ぽちに目を向けると、毛を逆立ててしっぽを丸めている。

「ぽち?」

「知り合いではないぞ! ないったらない! シヴィーラという名などしらん! 断じて!!」

 知り合いのようだ。

「へぇ。シヴィーラさんっていうのか。あー、初めまして? 俺は、ユーヤ」

「自己紹介など必要ない。お二人を渡しなさいと言っているのだけれど?」

「渡せません」

 ユーヤはキッパリと言い切った。ぽちと遭遇したときにも思ったことだが、魔族同士のいざこざに双子を放り込む気は毛頭ない。

「俺はこの子達の保護者だから」

「生意気な。人間風情が」

「なんとでも言え。二人は渡せない」

「ふ」

 美女は鼻で笑った。ぽちが地面に頭をこすり付けた。なんでだ。

 ユーヤが平然としているのを見て、シヴィーラもいぶかしげな表情になった。


「……おにーさん、すごいです」

 イリアの呟きが耳に入る。

「? 何が」

「にーちゃん、ていこうしてるじゃん。さっすがゆうしゃ!」

「え?」

 イリックも感心した様子でユーヤを見ている。ユーヤには意味が分からない。

「こっちのおばあさん、まりょくでまどわそうとしてるです。ぽちはあっさりかかりました。だからおばあさんをこわがってます」

 それで平伏しているのか、ぽち。イリアの説明で、推測がついた。

「……ほほう……それは、最初から交渉する気は全くないってことだな?」

 ユーヤに気付かれないように魔力で威圧をかけ、畏怖させ、戦意を喪失させ、双子を連れて行こうとしていたようだ。

「それなら、それなりの対応を取らせていただこう」

「!」

 シヴィーラが飛びのいた。そのときにはユーヤはすでに剣を振り切っている。

 眼鏡が地面に落ちた。

「最初は警告だよ、お嬢さん」

 狙ったのは眼鏡だけだ。その気になれば彼女を切ることはできたが、子供たちの前でそれは避けたい。

「でも、次は容赦しな――」

「おおおおお、お嬢さん!?」

 何でか、彼女はそっちに動揺した。ユーヤの剣技ではなく、言動に。


「わっわわわ、私!?」

「え?」

 真っ赤だ。なんでだろう。

「そ、そんなっ、お嬢さん!? あ、あ、あんたねぇ……っ」

「??」

 動転している彼女がよく分からない。

「あうあうあう、おおおお、覚えてなさい!!」

 動転したままシヴィーラは飛び去った。

「なんだぁ?」

 状況がよく分からないユーヤの背後で、ぽちがぼそっと呟いた。

よわい千三百年の妖女によう言えたな貴様……」

「は?」

「ババァだぞ」

 ぽちの背中に乗っている双子がうんうんと頷く。

「おばあさんです」

「うん。けはいがおばーちゃんだった」

 それでイリアがおばあさんと言っていたのか。しかし見た目は妖艶な美女だった。

 魔族恐るべし。


「おれ、にーちゃんがすげーとおもった」

「わたしもおもいました」

「え、なんで?」

「知らないせいなのか、ただ単に自覚がないのかわからんな貴様は」


ガンバレ勇者ー(棒読み)

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