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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
17/117

子育て勇者と魔王の子供・17

「にーちゃん、とーちゃんのおたから、どこにしまってんの?」

 スープを作っているとき、なんとはなしにイリックに聞かれ、ユーヤはさらっと答えた。

「この中」

 示したのは、腰に下げている小さな袋。魔王の子供は目を瞬かせ、ユーヤの腰にある小さな袋を凝視する。

「……おとーさん、かいしょなし」

「とーちゃん……こんなちびっとがおれたちのよういくひ? にーちゃんかわいそう」

 しみじみと双子が呟く内容に、ユーヤはああ、と、納得した。魔王の残した財宝が、こんなわずかなわけがない。説明してやらなくては。

「違う違う。これ、魔法の袋。無限の小袋っていって、たくさん物が入るんだ。重さも感じない。魔法の品だよ」

 以前仲間だった賢者兄妹の妹のほうに貰ったものである。魔法をいろいろ使うというより、品物開発を重点的にしていた妹だった。あまり魔法を使うほうには才能がなかったようだけれども、魔法の品物を作る能力はかなり高かったのである。

「便利だろ?」

「なるほどー。すごいですね、にんげん」

「すげー。こんなのつくれんの?」

 と、双子は興味津々。

「うん。俺には原理はサッパリだけど、これを作った子は凄かったよ。こんな凄い品物を、簡単に作っちゃうような女の子だった」

「ふ。所詮人間の作るもの。どこかに欠陥があるに決まっておるわ」


 もはや言葉での突っ込みすらなく、高い青空の中に吹き飛ばされていくぽち。

「にーちゃんのなかまだったにんげん?」

 何事もなかったかのようにイリックは会話を続けてくる。

「うん。あとでぽちに謝ろうな。俺の仲間だったよ」

「どうしていまいっしょじゃないですか?」

 謝罪することをスルーする双子にため息をつきつつ、ユーヤは質問に答える。

「謝ろうな? 今一緒じゃないのは、その子にもやりたいことがあったからだよ。賢者を目指してて、学問の街に行くまでの仲間だったんだ」

「ふられたですか」

 上目遣いに言われました。

「えーっと……恋人とかじゃないからふられたっていうのは適切じゃない」

「じゃあ、すてられたのか」

 左右からのコンボは全くもって容赦ない。

「違うって……」

 これはどう説明すればいいのか。単に、彼女と自分は目的地が一緒だったからそこまで歩いて、そこからは目的が違ったから別れただけである。

 確かに、彼女との旅は楽しかったが。

「にーちゃん、おれたちがいるからな」

「おにーさん、げんきだしてください」

 子供たちからはすっかりフラれ男扱いである。


 恋人とかじゃないから違う。そんな説明を何度か繰り返した後、子供たちは言った。

「よし、わかった! にーちゃん、おれがおっきくなってりっぱなまおうになったら、けっこんしてやるよ」

「そのころまでおにーさんがどくしんだったら、わたし、およめさんになってあげてもいいですよ」

 プロポーズされました。脱力感を身にまといながら、ユーヤはなんとか反論する。

「……いや……魔王にならなくていいから。というか、イリック、男同士は結婚できない。あと、イリア、君が大きくなる頃、俺はよぼよぼの爺さんだから、遠慮しておく」

「え、そーだっけ?」

「そうなのですか?」

 ませてはいても、やはり子供。そんでもって魔族。一般常識が大きく欠けている。

 それでもユーヤのことを考えて言ってくれているので、子供って可愛いなぁと思った瞬間だった。

「そっかー。じゃ、おれがにーちゃんのよめさんさがしてくればいいんだよな!」

「じゃあ、いそいでおおきくなります」

 なんか違う方向に理解されました。


 これどうやって理解させればいいのだろう。

 子育てって本当に難しい。魔王を倒す方がラクなんじゃなかろうか。

 双子と旅をし始めて、最近そう思うようになったユーヤである


仲間のお話。

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