子育て勇者と魔王の子供・92
そっと更新するはい寄るナニカ。
いろいろなことがありすぎた。
王様は娘に王の座を譲り、隠遁。淫魔の奥さんと平穏に暮らしている。
最近、イリックに影響されたのか家庭菜園を始め、淫魔の妻のために果物の育成に挑戦しているようだ。
仲が良くて何よりである。
元魔王と死の化身夫妻も、平穏に暮らしている。元魔王は十年の間に償いの全世界行脚をし、いろんなところでボッコボコにされ、ときどき奥さんの仕事場に流れ着いたりしていた、らしい。瀕死になっては戻って、また瀕死になっては戻って、繰り返しながら償いつづけ――世界の住民は元魔王を許した。
具体的には、元魔王の償いと、現魔王の双子の証言により、大魔王のせいだということが分かって、元魔王ではなく大魔王を吊し上げた。
大魔王は繰り返し冥界に連行されているらしいが、連行されるたびに現世に戻されてボコボコにされている。民の怒りは深い。
最近ようやく「世界征服なんて考えるんじゃなかった……」と呟くようになったとかなんとか。今頃か。遅い。
姫――女王は、未だに少年にはぁはぁしている。
一応、結婚はしており、夫とも仲睦まじいが、趣味とは別とは女王の談。自重してくれないものだろうか。というか、旦那、止めろ。「実際に何かするわけじゃないし、眺めているだけからいいじゃないか」と、にこやかに見守っていていいのか。
ちなみに、女王夫妻には娘がいる。年上好みらしい。母が反面教師になったのだろうか。それとも単なるファザコンか。どちらなのかは分からない。
ぽち。通常営業。出稼ぎしながら、妻と子供を養う日々。実家の魔王城に戻ってくると、時々空高く飛んでいるし、凍らされるし、刻まれる上に埋められている。
出稼ぎに出ているときのほうが幸せなのではなかろうか。いや、飛んでいても燃えていても凍っていても埋まっていても、どこか恍惚としているので幸せなのかもしれない。放置安定で良いのだろう。
はにーと子供たちは、可愛がられている。魔王城のメイドさんたちのアイドルで、ブラッシングに余念がないため、父のぽちよりも毛並みが良い妻子だったりする。この境遇の差は何なのだ。
下心の有無か。純真さか。
教会のおねえさんと賢者カリス。
ぶん殴られた上に思い切り揺さぶられていたカリスは、次の日頬を腫らしながらげっそりしていた。
反対に教会のおねえさんは上機嫌でツヤツヤしていた。
……ナニカ吸い取られているかにも見えたが、どこか幸せそうだったので、まぁ、仲直りしたようである。
子供に恵まれるのも早いかもしれない。
賢者の卵オーラと、双子魔王の片割れイリック。
……オーラの挙動が面白いくらい怪しい。イリックに話しかけられるたびに飛びあがり、真っ赤になる。彼女の反応が楽しいらしくて、イリックがまた笑いながら彼女に何か囁き、オーラが首まで赤くなり――だが怒らない。
こちらも、何かあったのか、仲良くなったようである。
そして。
勇者と、魔王の片割れは。
もうそろそろ終わります。はい。