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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
11/117

子育て勇者と魔王の子供・11

 勇者ユーヤは深く深くため息をついた。

「またお前か……」

 四足歩行の獣型魔物と、三度目の邂逅。こちらとしてはそんなもの、望んでいない。

「王子と姫を渡せ!」

 獣魔物の要求は一つ。魔王の子供である双子を寄越せ。ユーヤとしては魔王の座争いなんていうものに、あの双子を差し出すつもりはない。毛頭ない。

「こりないな」

「うるさい! 王子と姫を」

「またきたぞあいつ!」

「しつこいまものはきらいです!」

 子供たちも学習したようだ。今回の薪拾いはユーヤからさほど離れていなかった。そして、前回ユーヤが言ったこともきっちりと覚えていてくれた。

 問答無用で攻撃はしないように、というひとことを。


「かえれー!」

「きえなさい!」

「ちゅうこくしたぞ! ぶっとべ!」

「けいこくしました! そういうわけでどかーんです!」


「……うん。俺の言うことを覚えていてくれたのは嬉しいよ。でもな? 警告した後即座に攻撃するのは、問答無用と変わらないからな?」

 懇々と双子を諭すユーヤの後方で、獣魔物がケイレンしている。

 イリックの一撃でキリモミしながら空高く舞い上がり、落ちてきたところをイリアの追撃、盛り上がった大地にはさまれた。

 多分、死んではいないと思うが。あそこまでの攻撃をくらって、まだ生きている頑強な魔物に感心してもいる。

「むー、むずかしいな、にーちゃん」

「いや、難しくないって。とにかく、言葉が話せる相手なんだから、まず会話をしよう」

「でも、いくさはせんてひっしょうです」

「戦じゃない。あの獣魔物は……ってこれ言い辛いな……とにかく、アイツは、君達を保護したいだけで、危害は加えないだろうから、そういう相手に実力行使は」

「おれたちにこわいことしなくても、にーちゃんくわれるかもしれないじゃん」

「そうです。おにーさんたべられたらこまります」

 双子は真顔である。

「……えーっと、心配してくれてありがとう」

 むずがゆい。ユーヤは困った顔で笑う。


 が。

「うん、しんぱいした! にーちゃんいなくなったら、おれたちろとうにまようもんな!」

「はい。わたしたち、せいかつのうりょくありませんから、ほごしゃいないとこまります」

 魔王の子供たちはしたたかだ。年頃に見合わないほどにしたたかだ。やっぱり魔王の子供なだけはある。なついてくれているわけでもないのか、それとも照れ隠しなのか。非常に判断しづらい。

「……あー、まぁ、面倒は見るから。とにかく、問答無用はよしなさい」

「はぁい」

「ぜんしょします」

 それぞれに頷く子供たちに苦笑いして、ユーヤは振り返って魔物をつついてみた。

「げふ」

 呻く。

「頑丈だなぁ……」

 ぺん、と、頭を叩いてやって、そのまま放置した。

 きっと復活して、明日もまたやってくるだろう。

 四度目に現れたら……決着をつける。


けものまものって言いづらいですよね。

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