子育て勇者と魔王の子供・83.6
本日も会話です。両親と息子の悪巧み(笑)
「イリアとにーちゃんのけっこんしきっていつやんの?」
「うむ。少なくともあと十年は先のようだよ。イリアはともかく、婿殿のほうが頭が固いからね」
「にーちゃん、ゆうしゃだもんなぁ。まじめ。はーれむっていったらおこられた」
「うむ。そこら辺りは父の真似をしてはだめだよ、イリック」
「にーちゃんもそういってた」
「だろうね」
「かーちゃんははーれむおこる?」
「うむ。離婚したいのなら勝手にしなさい、と、言うくらいには怒るよ」
「りこんされちゃうのか……とーちゃん、よわいなー」
「イリックは魔王になってハーレムを作りたいのかな?」
「だめ? なんかかっこいいかとおもったんだけど」
「父は恰好良いかい? 魔王だったし、ハーレムを作ろうとしていたけれど。ほら、よーく思い出してご覧。格好良かったかい?」
「………………びみょう」
「だろう」
「あれー? まおうって、かっこわるい?」
「どちらかといえば、勇者のほうが格好良いのではないかな」
「うーん、そうかも!」
「……散々な言われようなのだが……父さんはかっこよいのだよ、イリック」
「じぶんでいってもだめじゃね? とーちゃん」
「…………四天王とか作ったのは父さんだぞ?」
「あいつらへんだもん。へんなことばっかりいってたし。にーちゃんひとりにまけたし」
「あれはだな、勇者がおかしいのだ。異常なのだ。一人で魔王の城に来るか普通。仲間とかいただろ、なんで一人で特攻するんだ。そして突破できたのだ? それなりに防備をしておいたんだぞ!?」
「にーちゃんすげー」
「いやいやいや、おかしい! いくら勇者だからって一人はおかしい。友達居ないのか。ぼっち勇者か。人望がないのか」
「教会のおねえさんにべったりしているあの男は仲間のようだが」
「変態じゃないか。賢者とか何とか言ってたが、本当なのか? ただのストーカーじゃないか! 美人のおねえさんにつきまとうなんてうらやまけしからん!」
「本音が出ているぞ旦那。教会のあのひとは近寄ったら消し炭にされると思えと言っているだろう」
「しかしだな、あの賢者はいまだに消し炭になっとらんぞ? 太古の魔王も衰えたのではないか?」
「近寄ってみればわかるよ。ただ、彼女に消し炭にされるか、私に職場(=冥界)に連行されるか、どちらが早いかは分からないが」
「即死ルートなのだな妻よ。いや、試そうとか思ってないぞ? 思ってないからな?」
「ああ、試したら、婿殿からも攻撃が来るかもしれないな。姉弟のような間柄らしいから。仲が良いな。人望あるじゃないか。彼が望んだら、教会のあのひとは魔王退治に手を貸してくれたかもしれん」
「太古の魔王が現在の魔王退治ってなんの冗談だ。語り継がれる伝説だけで勝てる気がしないのだが」
「そもそも病に負けただろうが」
「……ぐうの音も出んぞ妻よ……」
「とーちゃんやっぱかっこわるい」
「駄目な元魔王の話題は置いておいて、だ」
「うん。だめなとーちゃんはほうっておいていいね」
「……家族からの愛が痛い……」
「とーちゃんうぜえ」
「旦那、少し黙れ。真面目に将来の話をしているのだ」
「うむ」
「とにかくだな、婿殿は頭が固い上に真面目で、しかも理性的だ。今までのことから、色仕掛けは通用しないとみて良い。だが、自覚してくれたおかげで内縁の婚約者扱いをしても良いだろうと、母は思う」
「うんうん」
「できれば世間的にも婚約者扱いにしてしまいたいところだが……」
「まぁ、幼女趣味の変態扱いされるだろうな、師匠が」
「年齢がネックなのだよな。年の差十以上……しかたないのだが」
「おれとイリアはこどもだもん。しょーがないよね。ねーねー、かーちゃん」
「うん? なにかな」
「いまおもいついた! にーちゃんもこどもにしちゃえばよくね?」
「…………」
「…………」
「旦那」
「うむ」
「若返りの薬……在庫はあるか?」
「幸い、ある」
「年の差は十以上。ならば、縮めればよい」
「うむ」
「イリック、良い案を出してくれてありがとう」
「えへへー」
「……へっくしょい!」
「おにーさん、かぜですか?」
「いや、鼻が何だかムズムズしただけだよ。ただのくしゃみ」
逃げて勇者、地の果てまでも逃げてー(追いつかれると思うけど・笑)