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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
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子育て勇者と魔王の子供・83

「おにーさん」

 畑仕事を祖父に教わり始め、イリアも花嫁修業を始めた。イリックも畑仕事を手伝ってくれており、オーラの学校建設も順調だ。祖父の知り合いの大工さんが建築を請け負ってくれている。曾祖父母の知り合いらしく、やたらと仕事の早い上に腕の良い大工さんだ。

 カリスはまだ『彼女』に引っ付いて歩いており、どこか遠方から訪れた『彼女』の昔の知り合いらしい小柄な女性も一緒になって『彼女』にくっついている。

 死の化身も仕事が少し落ち着いてきたようで、家にいることが増えた。ときおり死にかける元魔王の看病に忙しくなったとこの間ボヤいていた。

「お、イリア。お弁当かな? もうそんな時間か」

「はらへったー!」

 祖母と一緒にイリアがお弁当を届けてくれる毎日だ。

「今日はなんだ?」

 と、祖父も汗を拭きながら問いかける。

「あけてからのおたのしみです!」

「そうそう。お楽しみ」

 祖母とイリアは仲が良い。和むなぁと思うユーヤである。


 お昼。みんなでお弁当を広げ、水筒の水で手を洗ってから楽しみにしていた弁当を開ける。

 イリアの料理の腕前は、まだまだである。幼児なのでしょうがない。ただ、味の指導は祖母がしているので、見た目はともかく、味はまぁ、食べられる。

 食べられる完成度のものだけ、弁当に詰めているらしい。焦げたとか、食べられない味に仕上がったものは、行く先が決まっていた。

「おおお、姫のお作りになったサンドイッチ……! 吾輩、なんという果報者!」

 と、感激しながらサンドイッチを食べている、ぽち。珍しく完成品を上げたのかと思っていたら、イリアは至極冷静に説明してくれた。

「ゆでたまごのさらだをつくってみたら、すごくしょっぱかったのです。おしおをいれすぎたのです。なので、ぽちにあげました。こっちのさんどいっちはふつうなので、おにーさん、たべてください」

「うん。ありがとう。美味いよ」

 ぽちが泉の方向に走って行ったのが見えた。よほどしょっぱかったに違いない。それでも全部食べて行ったのだから、あいつの根性にちょっと感心した。

 サンドイッチを口にして、普通に食べられると思ったので、褒めてみた。

「イリア、だんだん上手になってきたなぁ」

「ほんとですか! それはぷろぽーずですね!?」

「……いや、まだ早いからそれ」

 目を輝かせる幼女に、苦笑する。イリアの首にはしっかりと、誕生日に贈ったネックレスが下がっている。寝ても覚めてもずっとつけてくれているようだ。大事にしてくれて嬉しいと同時に、くすぐったい気もする。


「ばーちゃん、これなに? すっげーうまい!」

「これ? これはねぇ、イジク鳥を塩蒸しして、ちょっとハムみたいにしてみたのよ。普通に食べても美味しいし、何かに混ぜても美味しいのよ」

「うまい!」

「そうだろそうだろ。ばあさんは料理上手だからな」

 と、イリックに笑いかける祖父。嬉しそうに微笑む祖母。いくつになっても仲が良い夫婦である。

 のほほんと、いつもの昼食が続く。昼からは新しい野菜の種を植える。畑の脇にある果物の樹も手入れをしないといけない。そろそろ寒くなってくるから、冬の支度も考えないと。

 茶をすすりながら思っていたら、イリアに袖をくいくいと引かれた。

「ん? どうした?」

「おにーさん、そうだんがあります」

「相談?」

 改まってなんだろう。何か考え事でもあるのか。イリアは可愛らしく小首をかしげて見上げてきた。

「よびかた、どんなのがいいですか?」

「?? 呼び方?」

 どういう意味なのか測りかねた。

「そうです。よびかたです。うちのおかーさんはおとーさんのことを『だんな』、おにーさんのおねえさんはおにーさんのおにいさんを『だーりん』、おばーさんはおじーさんのことを『あなた』ってよんでます。けっこんしたら、わたしはおにーさんをどうよんだらいいですか?」


 気が早い。

 速いったら速い。


「え、ええと……それは大きくなってから考えてもいいんじゃないかな?」

 俺に一体どう答えろと言うのだろう。そもそも、まだまだ先の話だし。まだ『おにーさん』でいいじゃないか。

「いまからかんがえておくのです。ぷろぽーずされましたし」

「してないから。気が早いから」

「『だーりん』だとしんこんさんみたいです。『だんな』だとじゅくねんみたいです。やっぱり『あなた』がおうどうですか?」

 周囲をしっかりと良く見ている幼児である。あなどれん。子供は意外と周りを見ているとよく分かった。

「イリア、イリア、『おまえさま』とかなまえに『さん』づけとかは?」

 イリックもどこでそんな情報を仕入れてきた。元魔王か、元魔王だな? この双子にしょーもないことを吹き込むのはアイツだそうに違いない。今夜あたりまたゆっくりと話し合う必要が出てきたきがする。

 父親だけでなく、たまに母親までも調子に乗るから困る。

「そうですね、おにーさんのつぼにはいるよびかたでないといけません。というわけでおにーさん、どんなふうによばれたいですか?」

「……『おにーさん』で」

「いまといっしょです。ふうふっぽくないです! ……ひがわりでよびかたかえてみますか」

「いやいやいや『おにーさん』でいいから!」

 気が早いから。本当に気が早いから。十数年後に結婚するころに考えてほしい。

 そう思って止めたのだが、双子は顔を見合わせて、何やら誤解した。

「イリア、にーちゃんはいもうとぞくせいによわいんだ、きっと!」

「そうですか! ではよびかたは『にいさま』『あにぃ』『あにき』『おにいちゃん』『おにい』とかありますね! どれがいいですかおにーさん!?」

「違う違う違う!」

 だから誰だこういうことを双子に吹き込むのは!


 ユーヤは今夜も元魔王に説教することを決意した。

呼び方どうしたらいいですかねぇ?(笑)

1・ダーリン

2・旦那

3・あなた

4・そのほか(上記以外のご意見がありましたらお聞かせください・笑)

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