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第7話 反政府組織の影

 確か、作中でもダーティ家は悪役貴族として有名だと語られていた。


 しかし、ダーティ家で生まれ育って十年になるが、悪役貴族らしさはまるで感じられない。


 両親はどちらかと言えば親バカの部類だし、屋敷に使える人たちも悪い人は一人もいない。


 ゲームでは相当な悪事をしてきた家って言われていたのだが、俺が知る限り悪事なんて何もしてない。


 何がどうしたらゲームで聞いたダーティ家みたいな噂が出てくるんだ?


 俺がそんなことを考えていると、自室の扉がノックされた。


「ヴィラン様。少しよろしいでしょうか?」


 すると、扉の先からリーナの声が聞こえてきた。俺は慌てて血の付いたぞうきんを隠してから咳払いを一つする。


「リーナか。入れ」


「失礼いたします。ヴィラン様、ダスト様より伝言です。来週の外出する予定を延期させて欲しいとのことです」


「ああ、そのことか。わかった」


 俺が修行ばかりしているせいか、たまに両親が俺を外に連れ出そうとしてくれる。今回もその一環で来週外で食事をする予定になっていた。


 まぁ、屋敷でも十分過ぎるほどおいしいご飯を食べているので、外に行かなくてもよくなったのはありがたいかもしれない。


 でも、親バカの両親が俺との予定を延期するのは珍しいな。ここ数日ダストが屋敷に帰ってこないことと関係しているのだろうか?


 俺は腕を組んで考えてから、リーエを見上げる。


「そういえば、最近慌ただしいようだが何かあったのか?」


 すると、リーエは真剣な表情で口を開く。


「領地内に反政府組織の拠点があるとの情報が入り、その拠点の特定と反政府組織の確保に追われているようです」


「反政府組織?」


 俺は思いもしなかった言葉に眉根をひそめる。


 そういえば、ゲームではダーティ家が反政府組織と関りがあるとか言われていたっけ? 匿っているとかいろいろ言われていた気がしたんだが、確保に追われているって言ったか?


 俺はゲームと違う展開に首を傾げる。


「初耳だな。というか、それは憲兵の仕事じゃないのか?」


 いくら領主だからと言って反政府組織の確保は業務外だろ。


 リーエは俺の言葉に頷いて眉を下げた。


「はい。本来はそうなのですが、ヴィラン様に何かあったら大変だからと捜査に協力しているようです。正規な手順を踏まずとも、権力を行使すれば捜査が早く進むと仰っていました」


「いや、俺ほとんど屋敷から出ないんだが」


 俺はダストの親バカすぎる行動に少し引いてしまった。


 しかし、まさかダーティ家が反政府組織を捕まえようと躍起になっていたなんて事実は知らなかったな。


 俺がヴィランに転生したことで、ゲームの設定が変わったのか? いや、俺が転生した直後からすでにダストたちは親バカの気質があった。多分、俺の転生があってもなくても、ヴィランのために反政府組織を捕まえようとしたんじゃないか?


 反政府組織……反政府組織かぁ。


「そいつらって、悪役だよな」


「ええ、かなり卑劣な悪役かと」


 俺は真の悪役を目指すと誓っておきながら、まだ悪役らしいことは何もできていない。


 そんな中、ダーティ家の領地で反政府組織として暴れている悪役がいる。


 真の悪役を目指す俺の目の届くところで、そんなことをしている連中がいたとは。


 これって、確実に俺を挑発しているよな?


 俺より目立ち、俺よりも悪い奴……。


「許せんな」


「そうですね。非人道的なこともしているようですし、許せません」


 リーエは俺の言葉に力強く頷いていた。


 『俺よりも悪い奴は絶対に許さない、俺がそいつらを全員倒して、真の悪役になってやる!』。


 どうやら、生まれたばかりの時に誓ったあの言葉を実行に移す時が来たようだ。


俺よりも悪い悪役は俺が成敗してくれる。そして、どっちが本当の悪役なのかはっきりさせてやる。


 ……悪役相手なら、反転させた回復魔法も使い放題だよな?



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