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第5話 俺しか使えない回復魔法の反転

 すると、鋭い痛みと共に左の指先から血が噴き出した。


 それもさっき果物ナイフでつけた傷跡よりも深い傷ができてしまった。


 俺は慌てて左の指先に回復魔法をかけ直す。すると、すぐに血は止まり、傷跡も残らず完治した。


 俺は胸を撫で下ろしてから、改めて左の指先を見つめる。


「あ、焦ったぞ。軽い気持ちでやったら、大変なことになったな」


 回復魔法を反転させることで、逆に人体に損傷を与える魔法を使うことができた。


しかし、一件凄い発見のように思えるが、正直この程度の発見なら他の奴らもやっているような気がする。


でも、回復魔法がそれだけ危険なら、専門書に誤った使い方として載せられそうなものだが、専門書にはそれらしい記載は一切載っていなかった。


単純に載っていないだけなのか……分からん。今ある情報だけでは判断ができないな。


 俺がそう考えていると、部屋の扉がノックされた。


「ヴィラン様? 今大きな声が聞こえてきましたけど、何かありましたか?」


「その声はリーナか?」


「はい、そうです。ヴィラン様、どこか痛めましたか?」


 リーナの声はどこか心配そうな声色をしていた。


 さっきの小さな悲鳴のようなものを聞かれてしまったのかもしれない。


「何も問題はない。そうだ、リーナ。少し入ってくれ」


「失礼いたします。ヴィラン様、本当に大丈夫ですか? 少し失礼しますね」


 リーナは部屋に入ってくるなり、眉を下げて俺の体に傷がないかチェックをし始めた。


 なんか随分と心配してくれてるみたいだな。少し悪いことをしたかもしれない。


 俺はリーナをなんとか安心させようと言葉を考えてから口を開く。


「リーナ、問題はないと言ったはずだ。俺がリーナに噓などつくはずがないだろう」


「は、はいっ、そうですよね!」


 すると、なぜかリーナは嬉しそうな笑みを浮かべた。


 ん? どこに笑うポイントがあったのだろうか?


 俺は目をぱちぱちとさせてから、「あっ」と小さく声を漏らす。


「リーナ、それよりも聞きたいことがある。回復魔法って攻撃魔法にもなったりするのか?」


「えっと、どういう意味でしょうか?」


 リーナは突然の俺の言葉に首を傾げた。


 まぁ、深夜に突然し始める会話ではないか。


 それから、俺はリーナに回復魔法が攻撃魔法になりえるという話をかみ砕いて説明した。


 一通り説明を終えると、俺の話を聞き終えたリーナは眉根をひそめた。


「原理上は可能なのかもしれませんが、難しいと思います」


「難しい? なぜだ?」


 俺が首を傾げると、リーナは少し考えてから口を開く。


「回復魔法は自然治力を利用して、体の修復を早めるというものです。当然、体を損傷させるとなるとその力は使えません。なので、体が傷ついた時に体がどのような反応をするのかを完璧に理解する必要があります。人体はまだまだ知られていないことも多いですから、その謎を解き明かさないことには難しいかと」


「え、そうなの?」


 俺は驚きのあまり素っ頓狂な声を出してしまった。


 ……いや、さっき試したら普通に使えたんだけど。


 なんでだ? なんで難しいって言われてることがあんなに簡単にできたんだ?


 もしかして、これも理系大学生の知識があるからなのか?


 正直、生物の知識は大学の頃に結構身に着けてきた。かなりマイクロな世界まで勉強してきたし、体が傷ついた時にどんな働きをするのかも理解している。


今の俺には医学の代わりに魔法が発達したこの世界では得られないような知識がある。その知識があるから回復魔法を反転させることができたってことなのか?


 じゃあ、回復魔法を反転させる魔法は俺しか使えないってこと?


「これは……使えるな」


 人体破壊の魔法使いだなんてとても悪役らしいじゃないか。


 俺は笑みを抑えられなくなり、声高らかに笑い声をあげる。


「フハハハハハッ! ついに悪役らしい力が手に入ったぞ!」


「ヴィラン様、深夜ですのであまり騒がれない方が……」


 決めたぞ! 俺は回復魔法を極めて真の悪役になってやる!


 こうして、俺は回復魔法を回復以外の用途で使うために、極めることにしたのだった。


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