表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/25

第22話 アリス殺害の依頼者

 俺たちは場所を移して、シャルロットと客間に向かい合うように座っていた。客間の扉の外にはリーナに立っておいてもらい、他の者が入ってくるのを一切禁じた。


 おそらく、これから話す内容な他の人に聞かせてはならない会話になるだろう。


 俺はソファに深く座り、正面に座るシャルロットを軽く睨む。すると、シャルロットは目を伏せた。


「さて、すべて話してもらおうか」


「……私がアリス様を刺して殺そうとしました。ただそれだけです」


「殺そうとした? 毒が仕込まれたことも知らず、あれだけ慌てていた奴がか?」


「あ、あれはっ、初めて人を刺したので気が動転していただけです」


 シャルロットは一瞬こちらに向けた視線をすぐに逸らし、気まずそうにしていた。


 アリスを刺した後の取り乱し方は、刺した奴の反応ではなかった。当然、何か裏があると考えているが、シャルロットは口を割ろうとしない。


 どうしたものか。


 俺は大きくため息を吐いてから続ける。 


「動機は?」


「個人的な恨みです」


「恨み?」


「はい。昔から、アリス様は私には手はいらないものを持っていて、それを自慢してきました。それが長年続き、限界に来ただけです」


 シャルロットは特に表情を変えることなく、淡々とそんな言葉を口にした。


 この歳の子が羨ましがることはあっても、そこから殺意が芽生えるとは思えないよな。


 それに、原作と今のアリスを見た感じ、とてもそんな嫌な奴には思えない。


 シャルロットが何かを隠していることは明確だが、それ何なのか見当がつかない。


 こういうとき、原作知識が使えたら便利なのだが、魔法学園に通う前の原作知識なんて数えるほどしかない。


 シャルロットがもっと色々話してくれればいいが、黙秘を貫かれたらどうしようもないぞ。


 俺は唸って必死に考えてみるが、何も思いつかない。


 いや、何かしらあるはずだ。何か、何かないか……。


 そういえば、原作のアリスにも許婚候補という奴らがいたよな。


「許婚候補、か」


「え?」


 確か、何人か許婚候補というのがいたはずだが、原作に一度も登場しなかった候補者もいた。


「確か、最後の候補者だったか」


「っ!」


 俺が数度ぽろっと独り言を漏らすと、シャルロットが目を見開いて俺を見た。それから、何かを隠すようようにまた目を逸らしてしまった。


 なんで今の言葉でそんな反応をしたんだ?


 俺はそんな疑問を抱くが、まるでシャルロットが反応した理由が分からなかった。


 こうなれば、何かカマでもかけてみるか。


 真の悪役というのは、敵から情報を吐かせるのも簡単にやってのける。俺が真の悪役を目指すのなら、このくらい簡単にできなければならないだろう。


 俺はそう考えて、気合を入れるために深く息を吐いた。


「……やるか」


 俺が真剣な表情でそう呟くと、シャルロットが突然慌てたように立ち上がった。


「お、お待ちください! いくらヴィラン様がお強くても、ルルノフ公爵を殺るなんて無茶です!」


 俺は俺を心配するような目を向けてくるシャルロットを見て目をぱちぱちとする。


 え、ルルノフ公爵って誰だ? 


 俺は突然知らない名前が出てきて、しばらく黙り込んでしまった。


 ていうか、やるのは無理ってどういうこと? 真の悪役である俺が、シャルロットを相手に話を聞き出すことはできないって言いたいのか?


 俺はそんなシャルロットの言葉を受け、じろっとシャルロットを睨む。


「なぜそう思う?」


「ルルノフ家は公爵の家です。力でどうこうなる問題ではございません」


「俺にはできないと? ん?」


「ですから、権力の問題です。アリス様の件が許せないのは分かりますが、仕返しに公爵を殺すだなんて無茶です」


「……あれ?」


 なんだろうか。まるで話が嚙み合わない。


 今の話の流れだと、まるでルルノフ公爵がアリスが刺された件と関りがある的な発言だったな。


 ていうか、いつ俺がルルノフ公爵を殺すって言った? そんな物騒なこと口にしたか?


 俺はやるかって言っただけで……ん? やる、殺る?


 『やる』と『殺る』を勘違いしたってことか?


 いやいや、そんな物騒な言葉使ってないんだけどな。ていうか、今回の黒幕ってそのルルノフ公爵って奴なのか。


 俺がそんなことを考えていると、シャルロットが大きなため息を吐いた。


「ヴィラン様が情報戦もお得意ということは聞いていましたが、ここまでとは思いませんでした。どの段階で気づいておられたんですか?」


「いや、どの段階もくそもないだろう」


 だって、今さっきまで何も知らなかったんだからな。


 俺がそう言うと、シャルロットは静かに考え込む。


「今回、ヴィラン様と婚約するために、あらかじめ許婚候補には今回の件を通達していました。どこかからその情報を事前に得ていた。もしくは、ルルノフ公爵が動き出すことをあらかじめ予想して……いえ、私なんかにヴィラン様の考えが分かるわけありませんよね」


 シャルロットは諦めるように続けた。


「ヴィラン様がお気づきの通り、アリス様の殺害依頼を依頼してたのは許婚候補だったルルノフ公爵です。ヴィラン様のおっしゃた通り、最後の許婚の候補者の方です」 


 それから、シャルロットは事の真相を話してくれた。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ