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第15話 許婚解消のため悪役は奮闘する

 俺は突然現れたアリスに許婚の知らせを受けた後、すぐにダストのもとにその報告に向かった。


 ダストは俺が手渡された手紙を読んでから、目を見開いてアリスの使用人を見る。


「許婚? ヴィ、ヴィランとですか?」


「ええ。アリス様がどうしてもヴィラン様と婚約をしたいと仰っておりまして」


「そ、そうなんですか。ヴィランをそんなに気に入ってくださるとは」


 ダストは目をぱちぱちさせたり、眉根を寄せたりと困惑している様子だった。


 そりゃあ、そんな反応にもなるだろ。子爵だぞ、子爵。それもつい最近まで男爵だったんだ。王族とは住む世界が違い過ぎる。


 王女様に息子が求婚されるなんて展開、妄想でも考えたことなんかあるはずがない。


 すると、アリスが一歩前に出て真剣な表情で口を開いた。


「改めてご挨拶させてください、お義父様、お義母様。私、ロマノフ・アリスと申します。ロード王国の第二王女をしています。今日は婚約のご挨拶に参りました」


「こ、これはご丁寧に」


 すると、ダストとミリアは頭を下げ、アリスに軽く自己紹介を返していた。


 お義父様? お義母様? まてまて、まだ婚約の了承はしていないはずだぞ。気が早すぎないか?


 それに、さっきまで遊びに来たって言ってなかったか? メインが挨拶の方になって来てる気がするけど、大丈夫か?


 俺がそんなことを考えていると、ミリアがちらっとこちらを見てきた。


「婚約の挨拶……えっと、ヴィランもアリス様と同じ気持ちってことでいいのよね?」


 ミリアは使用人とアリスを気にしてから、控えめにこちらを窺うようにそう言ってきた。


 さすがミリア、細かいことに気づいてくれる素晴らしい親だ。


 ここで俺がきちんと言えば、婚約の話はなかったことになる。


 正直、やり込んでいたゲームのヒロインと婚約できるのは嫌ではない。それでも、今は真の悪役を目指している最中なので、アリスと恋仲になっているようない時間はないのだ。


 それに、悪役の伴侶がこの国の王女様っていうのはなんか違う気がするしな。


 そうはいっても、王女からの婚約を直接的に断ったら角が立つし、貴族社会で生きていきにくくなる。


 そうならないためにも、それとなく断るふうなことを言って、やんわりとミリアに断ってもらうことにしよう。


 あくまで悪役らしく、それっぽい感じで。


「フッ、あえて口に出す必要はないだろう。察してくれ」


 俺はミリアに不機嫌な感じを出してそう言った。


 普通に考えて、会って間もないのに婚約したいとは思わないだろう。それに、機嫌悪そうに言えば、婚約したいだなんて思っていないと伝わるはず。


 ふふふっ、あまりにも完璧すぎる。


 すると、ダストがミリアの肩にポンと片手を置いて頷いた。


「そうだぞ、ミリア。言いづらいことを言わせてやるな。ヴィランの年頃の男の子は、愛とかそういうのを照れてしまう年頃なんだから」


「……ん?」


 照れる? いやいや、明らかに不機嫌そうに言ったはずだぞ? 


 すると、なぜかミリアが温かい目を俺に向けてきた。


「そうよね。そもそも、ロマノフ国王から許婚の手紙が来るくらいですもの。すでに二人の愛と気持ちは確認済み。いまさら二人が愛し合っているだなんて、確認する必要もないわよね」


「へ?」


「そうだぞ。きっと、ヴィランがアリス様を助けた時に一目惚れしたんだろう」


 ダリアとミリアは納得した様子でそう言うと、さっそく国王に対する返信の手紙を書き始めた。


 いやいや、違うぞ。アリスが勝手にロマノフ国王にお願いして、俺を許婚にする手はずを整えてきただけだって。


「ま、待ってくれ。何か勘違いをしているんじゃないか?」


 このままではどんどん話が進んでしまう。


 さすがにこのままではまずいと思い、俺は手紙を書き始めたダストの手を止めさせた。


「「勘違い?」」


 すると、ダストとミリアは俺に止められて首を傾げていた。なぜ止められたのか分からないといった様子だ。


 危なかった。このままでは、アリスと有名貴族の子供たちを助けた時の二の舞になるところだった。


 さすがに、同じ轍を踏む俺ではない。


 やっぱり駄目だな。こういうときは、はっきり言わないと誤解を生んでしまう。


 俺はそう考え、拳を強く上に突き上げて声高々に声を上げた。


「俺は一目惚れなどしていない! 俺はこの世に生まれてから、ずっと思っているんだ! 俺は真のあーー」


「ヴィラン様……そんなに私のことを想ってくれていたんですね。生まれてからずっと想ってくださっていただなんて、情熱的です」


 すると、俺の話を遮るようにアリスがそんな言葉口にした。そして、なぜかアリスは顔を赤らめてうっとりとしている。


 ん? なんでそんな反応になるんだ? 俺は自分よりも悪いやつらを倒して、真の悪役になろうと生まれてからずっと思っていたって言おうとしただけだぞ。


 思う? おもう……想う? 嘘だろ、まさかそんな使い古された間違い方をしてるんじゃないよな?


 俺が目を細めてアリスを見ると、アリスは両手を頬に当てて、恥ずかしがるようにくねくねとして続ける。


「でも、ご両親の前でそんな熱烈な告白は少し恥ずかしいですわ。『真の愛』を私と探したいだなんて!」


 言ってない、それは言ってない。言おうとしたのは、真の悪役だから。『真のあ』までしか合ってないから。さすがに無理やりすぎるだろ!


 しかし、そんな心の中のツッコミが届くはずもなく、ミリアとダストは微笑ましい笑みを浮かべていた。


「ふふふっ。出会う前から好きだったなんて、ヴィランったらロマンチストね」


「まったく、惚気まくりだな」


 こうして、誤解を解くことができなかった結果、話はとんとん拍子で進み、許婚を了承する旨の手紙が完成してしまった。


 その後、誤解を解こうと奮闘したのだが、なぜか俺がただ惚気ていると勘違いされるばかりで、誤解を解くことができなかった。


 ……どうしてこうなった?


 俺がダストたちのいる部屋を後にしてうな垂れていると、廊下でアリスが俺の腕に抱き着いてきた。


「幸せになりましょうね。ヴィラン様っ」


 そして、アリスは恋する乙女の顔で俺を見つめていた。


 なんでこんなにメロメロなのよ。俺はただ反政府組織から助けただけだぞ。


 いや、本当になんでこんなにチョロイン状態なんだ? 


 確かに、アリスはゲームの中でも一番攻略しやすいキャラだった。それでも、ここまでじゃなかったはずだ。


 一体、どうしてこんな状態になったんだ?


 そう考えた時、一瞬俺の頭にはアリスと初めて出会った時の言葉がよぎった。


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